#フレイル対策

帰省時に見ておきたい「親の食事」のチェックポイント〜健康と要介護の狭間「フレイル」予防の基礎知識〜(前編)

第8回全国ビジネスケアラー会議 親の食事のチェック① #フレイル対策

2023年8月9日、リクシスは、第8回『ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

今回のテーマは「親の食事」。

フレイルとは、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態で、健康な状態と要介護状態の中間に位置します。介護予防・フレイル予防に欠かせない食事と栄養について、詳しく解説いただきました。

親御さんの食事についてどのように関わっていけば良いのか、離れて暮らしている方にとっては特に気になる問題かと思います。フレイルってどういう状況のことを言うのか、その予防に食事と栄養がどう関係するのかなど、基本的なことから実践できるような具体例までご紹介いたします。

<当日のプログラムおよび登壇者>
第1部 フレイル予防の基礎知識 ⇐このページのテーマ
第2部 「親の食事」のチェックポイント
第3部 Q&A
▼当セミナーのアーカイブ動画はこちら(無料会員限定でご視聴いただけます)
第8回全国ビジネスケアラー会議

本記事では、第1部の講演内容をダイジェストにてご紹介します。

米山久美子(ヨネヤマクミコ):機能強化型認定栄養ケア・ステーションeatcoco(イートココ)代表。管理栄養士。▼講演者プロフィール
米山 久美子(よねやま・くみこ)機能強化型認定栄養ケア・ステーションeatcoco(イートココ)代表/認定在宅訪問管理栄養士/在宅栄養専門管理栄養士/フレイルサポート栄養士
相模女子大学短期大学部食物栄養学科卒業。
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修士課程修了。

病院、高齢者施設などで管理栄養士業務を経験。その後フリーランスの管理栄養士として活動。「地域栄養サポート自由が丘」で訪問栄養食事指導、「認定栄養ケア・ステーションeatcoco」代表、慶應義塾大学看護医療学部非常勤講師など務める。国内外の学会等において地域における栄養支援や、訪問栄養食事指導についての発表や、後進の育成も積極的に行っている。
【出版】『70代は低栄養を防ぐが勝ち! シニアの手間なし栄養ごはん』(主婦の友社、2023/7)

 

健康と要介護の狭間「フレイル」について

フレイルというのは、健康と要介護の間の状態のことを言います。
今回特に皆さんに気をつけていただきたいのは、「プレ・フレイル」という状態です。ここを見逃さないようにしていただきたいと思っています。

健康長寿のために必要だと言われていることは、当たり前のように思えるかもしれませんが、栄養・身体活動・社会活動の3つの柱です。
コロナの影響もあり、どれもあまりできなくなってしまった方も多いとは思うのですが、早い時期から意識して取り組むことで、プレ・フレイルを予防していきましょう。

 

栄養(食/歯科口腔)から見たフレイル化

フレイル化していくには段階があります。 

【第1段階】社会性/心のフレイル期
「孤食」などがここに当てはまる時期です。孤食とは、孤独に食べるということ。1人で食べるようになっただけでも、食べる量がかなり減ってしまう方がいらっしゃいます。

【第2段階】栄養面のフレイル期
先ほど「ここを見逃さないようにしてください」と言ったのはこの時期が当てはまります。

【第3段階】身体のフレイル期
低栄養状態になってしまい、身体に影響が出てきます。

 【第4段階】重度介護期
栄養障害に突入してしまいます。

何かのきっかけで健康状態から要介護状態へドミノたおしのようになってしまう「フレイル・ドミノ」にならないよう、気をつける必要があります。

 

フレイル・サイクルを断ち切ることが大切

 「フレイル・サイクル」について、低栄養からスタートして説明させていただきます。

 低栄養状態になると、筋肉を作る素材が少なくなくなってしまうこともありサルコペニア(筋力・筋肉量の低下)になり疲れやすくなってしまいます。そうすると動くことが嫌になり、活動量や基礎代謝も低下することでエネルギー消費量も低下し、そうなるとお腹も空かなくなってしまい食べる量が減り、更に低栄養に。
この循環を「フレイル・サイクル」言います。フレイル・サイクルをぐるぐる回っていると要介護状態になってしまいますので、どこかで断ち切ることが大切です。

 

現代でも低栄養になる?

「現代において低栄養なんてあるの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省が発表した「令和元年度 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、下記のような報告があります。

65歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20㎏/㎡)
男性12.4%
女性20.7%

 85歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20㎏/㎡)
男性17.2%
女性27.9%

年齢が上がるにつれて、低栄養状態に陥るリスクが高くなる傾向にあるといえるでしょう。
すでに在宅療養をされている高齢者の方ですと、低栄養のおそれがある方、または低栄養の方は全体の70%近くいらっしゃると言われていますので、非常に注意が必要です。

では、なぜ低栄養になってしまうのでしょうか?
これまで見てきて原因になっているのではないかと思うものをまとめてみました。

 〇噛む力や飲み込む力の低下
→食べやすいものに偏る

〇慢性疾患(糖尿病や腎臓病など)の食事療法をしている
→必要以上の制限や間違った食事管理をしている

〇うつ・意欲の低下や認知機能の低下
→食欲低下や調理をしなくなる

〇加齢による身体的変化
→食物を身体に取り入れる機能の低下

〇食品の調達が困難(体力低下や免許返納、物価上昇の影響など)
→パンやご飯などの炭水化物中心や簡素な食事になる

〇不必要なダイエット
→必要のない食事制限やメタボ向けの栄養管理をしている

 

高齢者も痩せている方がいいの?

高齢者の方でも痩せている方がいいと思われますか?
テレビやラジオで「痩せる=健康」と言われていることもありますが、これは中年の方(特にメタボの方)へのメッセージです。
BMI値と死亡率の関係性を見てみると、BMI30の肥満の方よりも、BMI14の痩せすぎの方の方が死亡率が高いという報告もあるのです。

親御さんが「痩せよう」となさっている場合には、少し気をつけた方が良いでしょう。
BMI値は下記の計算で簡単に出すことができます。

体重(kg)÷{身長(m)の2乗}

BMI値の下限は年齢によっても異なってきます。
18〜49歳:18.5〜24.9
50〜64歳:20.0〜24.9
65歳以上:21.5〜24.9
21.5以下のBMIの方は要注意です。
親御さんのBMIをチェックしてみてください。

 

ゆびわっかテストで筋肉量の減少をチェック

BMIも大切ですが、筋肉量も非常に大切です。
筋肉量については「ゆびわっかテスト」という簡単な方法でチェックができます。

①両手の親指と人さし指で輪をつくります。
②利き足ではない方のふくらはぎの1番太い部分を、力を入れずに軽く囲います。

これで簡易的な筋肉量のチェックができます。

囲うことができなかったり、ちょうど囲めるくらいの場合には、サルコペニアの危険度はあまり高くありません。隙間ができてしまうという場合には、サルコペニアの危険度が高く、要介護や寝たきりになる可能性が高いと言われています。

 

シニアの栄養管理へのシフトが大切!

高齢者の方の食事について、例を出しますので少し考えてみてください。
AさんとBさんの食事、どちらに問題があるでしょうか?

 【Aさんの1日の食事】
朝:茶碗1杯のごはん(梅干し付)、味噌汁、漬物
昼:どらやき、緑茶
夜:バランスのとれたお弁当

【Bさんの1日の食事】
朝:バターとジャムをたっぷり塗ったトースト、砂糖入りのコーヒー
昼:ざるそば大盛り
夜:野菜をたくさん、お酒

 

一見するとAさんが低栄養で問題ありに見えますが、実は2人とも問題があるのです。
2人ともたんぱく質の多い食品が不足しています。
Bさんは「新型栄養失調」といわれている、カロリーは足りているものの必要な栄養素が足りていない状態です。こういった方はサルコペニア肥満(体重はあるが、筋肉量が不足している)になってしまうことも。そうなると転倒のリスクが高まってしまうので注意が必要です。

では、どれくらいたんぱく質が必要なのでしょうか?
高齢者はそんなにたんぱく質をとらなくていいと思ってしまう方がいらっしゃいますが、成人も高齢者も必要なたんぱく質の量はほとんど変わりません。

野菜をたっぷりとって、卵・肉・油を控えめにするというのは、あくまでメタボ予防の食生活です。
しかし、シニアの食生活では、卵・肉・魚・大豆・乳製品をたっぷりとって、まんべんなく色々なものを食べて、フレイル予防をしていくことが必要になってきます。
メタボ予防の食生活が健康な食生活だと思っている親御さんは、低栄養になる可能性がとても高いです。ぜひ意識を変えていきましょう。

後編はこちら

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