高齢者の食事に必要な5つのこと。注意すべきポイントや栄養素について解説

高齢者の食事に必要な5つのこと。注意すべきポイントや栄養素について解説

年齢を重ねるにつれて、栄養の偏りや嚥下(えんげ)の難しさが体調に影響を及ぼすことが増えてくるため、高齢者の方の健康を支える毎日の食事は、とても重要です。

今回の記事では、高齢者の食事における留意すべきポイントについて解説していきます。親御さんの笑顔と元気な日々のために、食事の工夫を通じて健康な食生活をサポートしましょう。

 

高齢者の食事における問題点とは?

年齢を重ねると、足腰など身体の機能が衰えるだけでなく、食べることに関わる能力も低下します。食事の偏りは栄養のバランスを崩し、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、日々の食生活の見直しが必要となる場合があります。まずは、高齢者の食事における問題点を見ていきましょう。

  • 味覚の変化
    年齢とともに味覚が衰え、食べ物の味を感じにくくなります。そのため、濃い味付けになりやすく、また美味しいと感じにくくなるため、食事の満足感が得られず低栄養になりがちです。
  • 噛む力の低下
    歯の本数や顎の筋力が減少し、噛む力が弱くなります。これにより、硬い食べ物を摂ることが難しく、柔らかい食材が好まれるようになります。
  • 飲み込む力の衰え
    年齢とともに唾液の分泌量が減少し、飲み込む力が弱まることがあります。これによって誤嚥(誤って気道に食べ物や飲み物が入ること)のリスクが高まります。
  • 栄養バランスの偏り
    食事の好みや環境の変化により、栄養バランスが崩れることがあります。特に、高齢者が必要な栄養素が不足しがちです。

 

70代から気をつけたい食事のポイント

台所で炒め物をする高齢女性の手

高齢者の食事における問題点を紹介しましたが、では、日々の食生活はどのような点に気をつけていくと良いのでしょうか。

 

タンパク質を毎日摂る

タンパク質の不足は低栄養の原因になります。タンパク質は、筋肉、内臓、骨、皮膚、髪の毛、血液など、日々新しく生成される体の構成要素として不可欠な栄養素ですので、日常的に摂取することが重要です。

特に、歳を重ねると筋肉量や筋力が次第に衰え、歩行や運動が難しくなってきます。介護が必要な状態の前段階を「フレイル」と言いますが、これを予防するためにも適切な量のタンパク質を毎日の食事で摂取することが大切です。

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、一日のエネルギー摂取量のうち15~20%はタンパク質から摂ることを目標とし、積極的なタンパク質摂取を推奨しています。フレイル予防し、いつまでも歩き回れる筋力を保つには、タンパク質は欠かせない栄養素なのです。

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

 

低栄養にならないバランスの良い食事

歳を重ねると食の好みが変化したり、ひとりで食事をする「孤食」が増えて準備が煩わしく感じられたりすることで、毎日同じような食事が続き、栄養素の偏りが生じる可能性があります。野菜や肉をさけ、手軽に食べられるパンや麺類が増えることで、特にカルシウムやタンパク質が不足しがちです。

カルシウム不足は骨の健康や高血圧などに影響を与えます。タンパク質不足は筋力や免疫機能を低下させ疲労感を引き起こすことがあります。低栄養にならないために、1日3食・主食と主菜と副菜をしっかり摂り、必要な栄養素の摂取を心がけていきましょう。

また、外出が減り日に当たることが少なくなると、ビタミンD不足になりがちです。ビタミンDも重要な栄養素で、カルシウム吸収を促進し骨密度を保つ役割がありますので、適度な日光浴や食事からのビタミンD補給も忘れないようにしましょう。

 

噛みやすく、飲み込みやすい調理を

必要な栄養素を摂取するためには食べることが重要ですが、高齢者の方の場合は無理をすると、喉を詰まらせたり、普段の食事が苦痛になったりしてしまう原因になりますので注意が必要です。高齢者の方は、以下のような食事を食べやすくする工夫をしてみましょう。

  • 噛みやすくして食べやすくする
    肉や魚は小さくカットする、分厚い肉は叩いて薄くする、脂身は取り除くなどの工夫をしてみましょう。食べる際に食物が喉に詰まることを防ぐことができます。堅い野菜は皮をむく、長めにゆでる、切り方を工夫するなど調理して柔らかくすることで食べやすくなります。
  • 飲み込みやすくする
    時間をかけて煮込んだり、ミキサーで細かくしたりして柔らかくするといいでしょう。また、飲み込みやすくするために片栗粉などでとろみをつける方法もあります。

食材の柔らかさや形状を工夫することで、食べやすくなり、栄養不足や誤嚥のリスクを減らすことができます。

 

手間なく簡単に栄養を摂取

独り暮らしや日中一人で過ごすことが多い高齢者の方は、食事の準備を面倒に感じてしまうこともあるでしょう。そのような時は、高齢者向けの宅配弁当や宅配サービス、市販の介護食などを利用するのも解決策のひとつです。

このようなサービスには、高齢者の栄養を考慮し、食べやすいメニューに工夫されていることがほとんどです。特に、不足しがちなタンパク質が含まれる肉や魚のメニューをメインに選ぶと良いでしょう。このようなサービスを利用すれば、手軽に栄養バランスのとれた食事ができます。

 

塩分の摂りすぎには注意

高齢者は味覚が低下することで、気付かないうちに塩分を摂りすぎてしまいます。塩分を摂取すると、体は水分を求めます。多くの塩分と水分を摂取すると、血液量が増え、血管が押し広げられて血圧が急上昇します。この現象は心筋梗塞や脳梗塞の原因となる恐れがあり、特に高齢者には危険です。高コレステロールと高血圧は動脈硬化を加速させるため、普段からコレステロール値の高い方は特に塩分摂取に注意が必要です。

ただし、注意をするあまり、食べることが苦痛になってはいけません。塩分を控える一方で、楽しみながらバランスを保つことが大切です。減塩・低塩食を工夫して、健康的な食事を楽しみましょう。

 

高齢者に必要な10食品群「さぁ、にぎやかにいただく」

「10食品群」とは、東京都健康長寿医療センターの観察疫学研究の結果に基づいて、高齢者の低栄養を予防するために考案された食事の指標です。この10食品群は、三色食品群や六つの基礎食品といった日本の栄養指導にも基づいており、これらをバランスよく摂取することは、高齢者だけでなくどの世代にもとって健康的な食事になります。特に食欲が減退する高齢者は、「多種多様な食品を摂取し、幅広い栄養素を取り入れる」ことが重要であり、これにより低栄養や筋肉量・体力の低下を防いで、健康な寿命を延ばすのに効果的とされています。

「さぁ、にぎやかにいただく」は、この10食品群である「魚、油、肉、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、海藻、芋、卵、大豆製品、果物」の頭文字を使用したスローガンです。

これらの10の食品グループから毎日1つずつ選んで、少量でも毎日7つ以上摂取することを心がけましょう。

参考:東京都健康長寿医療センター「おいしく食べて低栄養予防!

 

まとめ

高齢者は身体的な機能の低下や孤食の影響で、簡素な食事をしがちです。摂取する栄養のバランスが崩れ、低栄養になると、病気だけでなくフレイルを誘発する要因にもなります。

高齢者の食事には以下の5つのポイントについて注意を払いながら、健康な食生活をサポートしましょう。

  • タンパク質を毎日摂る
  • 低栄養にならないバランスのよい食事をする
  • 食材を噛みやすく、飲み込みやすくするよう調理法を工夫する
  • 手間なく簡単に栄養を摂取できるサービスを利用する
  • 塩分の摂りすぎには注意する

また、三色食品群や六つの基礎食品といった日本の栄養指導にも基づいた「10食品群」をバランスよく摂取することは、高齢者だけでなくどの世代にもとっても大切なことです。日常的に意識して取り入れてみましょう。

 

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この記事の監修者

サポナビ編集部

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