介護のプロに教わる、高齢者のフレイル対策サポート術とは

介護のプロに教わる、高齢者のフレイル対策サポート術とは

提供:アサヒグループ食品株式会社

3回に渡り高齢者の食事と栄養の大切さについて取り上げてきましたが、最後になるこの第4回では、実際に高齢な方とコミュニケーションを日々とられている介護福祉士のお二人にお話を伺いました。現場でのお仕事を通して体験した事例を元に、ビジネスケアラーの方々に知っておいていただきたい高齢者の食事と栄養について、教えていただきます。

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今回お話を伺った方

室津瞳さん

介護福祉士・看護師・NPO法人 代表理事

介護職・看護師として病院や施設勤務。育児と介護と仕事の重なるダブルケアを約8年間経験した後、NPO設立

金山峰之さん

介護福祉士・社会福祉士・准看護師

福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師や学会のシンポジスト、メーカーへシニア市場の講演などを行っている。

高齢者の食生活の実態とは

まずはしっかり”食べる”ことが、フレイル対策の第一歩

サポナビ事務局(以下、サポナビ)お二人は普段、介護・看護のプロとして日々ご高齢者の方々のことを間近で見ていらっしゃるかと思いますが、本日は特にフレイル対策や栄養、お食事の観点からお話を伺いたく思います。
早速ですが、高齢者の食事について現場でのご経験を踏まえてどういった特徴があるか教えていただけますか?

室津さん:まず高齢者の方の場合、身体機能の低下、疾患によって味の感じ方や嚥下能力に差が出てくるので、程度に応じて食事形態やその配慮は変わってきます。

味覚や嗅覚、視覚、知覚の感じ方が衰えていくので、割と塩味や甘味などはっきりした強めの味だと分かりやすくおいしいと感じるようです。
例えば私の両親の例ですが、70歳くらいからフライドチキンが好物になってよく食べていました。他にはハンバーガーや、牛丼、ピザなどですかね。昔は食べなかったのですが、好んで選ぶようになりました。

サポナビ:いわゆるジャンクフードだと思うのですが、高齢者が食べても大丈夫なのでしょうか。

金山さん:ハンバーガーや牛丼はたんぱく質の摂取ができるので、実はおすすめできるお食事ではないかと思います。食欲が湧かず必要カロリーが足りない事の方がサルコペニア*やフレイル*の心配があるなと感じるので、お好きなものから食べていただくのも一つの考え方です。

 *サルコペニアは筋肉量や筋力の低下による身体機能の低下であることに対し、フレイルは身体的だけではなく、精神的・社会的な衰弱や虚弱を含みます。

介護が必要でヘルパーさんが介入されている場合は栄養バランスなども考えた食事を用意してくれるのですが、介護が必要ではない段階では食事のフォローに入れていることは少ないと思います。そのため、まずはきちんと食事を食べられているかを気にしてあげて、疾患がなければ足りない栄養素をレトルト食品や栄養補助食品、簡易的には野菜ジュースなどで補うのでも良いと思います。完璧ではなくてもOKです。

※高血圧症など疾患がある場合は医師の指導に従ってください。

サポナビ:まずはしっかり食事をすることが大事なんですね。なかなか量を食べられなくなって必要なカロリーを摂取できない場合もあると思うのですが、何か対策はありますか?

金山さん:食が細くてあまり食べられない場合は、飲み物やおやつなどで補うのも良い方法だと思います。

1回に食べられる食事の量が減る傾向にあるので間食は貴重なエネルギー・水分の補給タイミングになりますし、やわらかくて甘いものは安定的に好まれます。実際、デイサービスなどの高齢者向け施設では、カロリーや水分補給のためおやつの時間を取り入れているところがほとんどです。和菓子、スポンジ系菓子、ソフトせんべい、アイスクリームなどはよく提供されていますね。

1回のお食事の量が食べられなくても、回数を増やすことで補うという方法をおすすめをしています。

加齢による”飲み込みづらさ”は見逃さないで対策を

サポナビ:私の祖母もよくアイスクリームやゼリーを好んで食べていました。カロリーもそうですが、高齢者のお食事の際に気をつけることはありますか?

室津さん:金山さんが仰っていたように、トイレが近くなるなどの理由で水分をあまり取ってくれないことがあるので、高齢者施設の職員はどうやって水分補給をしてもらうか毎日工夫を凝らしているのですが、実は水分補給量が減ることで、唾液の量が減ってむせやすくなります。

唾液の量に限らず、75歳以上くらいから介護リスクが跳ね上がる境目なので、加齢により飲み込みづらさを感じ始めたりする人が出てきますが、むせ込みがあるのに頑張って食べている人もいます。嚥下状態のレベルにもよりますが、うまく噛めなかったりむせ込みがある場合は食事にストレスを感じて食欲が減退したり、誤嚥の危険性もあるので、嚥下レベルに合わせた食事形態に変えていく必要があると思います。

肉じゃがなどの煮込み料理や歯ぐきで噛める豆腐料理、とろみ調整食品や、「かむ力、飲み込む力」のレベルに合わせて調理されたレトルト食品や冷凍食品を活用するのも良い方法だと思います。

サポナビ:なるほど、トイレが近くなるので水分を取らなくなるというのは初耳でした。最近の夏はとても暑くて熱中症が怖いので、むせ込み対策と合わせて水分補給をしているかも確認しておきたいですね。

金山さん:あとはたんぱく質を積極的に摂取していただきたいですね。十分にお食事をしていても、たんぱく質が不足していると筋肉量が減少してフレイル状態になる可能性が高まります。レトルト食品や冷凍食品を活用する場合はたんぱく質を(それ以外の栄養バランスも)気にしつつ、いまは食べやすいスイーツやゼリー、ドリンクなどでもたんぱく質が含まれている補助食品的な商品があるので、それをうまく取り入れても良いかもしれません。

負担が大きいダブルケアには既製品をフル活用

サポナビ:実際にご高齢者がいる家庭での食事について、よく相談に上がることはありますか?

室津さん:最近ですと親御さんと同居している家族介護の場合、高齢者の食事と現役世代・小さな子どもの食事の準備が大変という声を多く聞きます。いわゆるダブルケアの状態です。

私はダブルケア家族をサポートするNPOを運営しているのですが、高齢者の主食はおかゆ、現役世代・子どもは米飯の2種類を用意するだけでも大変。基本的には頑張ってやわらかく、手作りで作ったり、高齢者のものを別にカットしたりなど意識して食事を考える手間と準備の労力が小さくありません。地方の方は、出来合いの商品を使うことに抵抗感が強い(高齢者に怒られる)ので、さらに食事の負担感を感じる場面があるようです。

ですが、罪悪感を抱かず上手に介護用や一般向けのレトルト食品を適度に活用して、生活に余裕を持って欲しいです。NPOで支援をしているご家族は、あんかけのメニューで、高齢者と子どもにどちらも対応できる工夫をしていたり、高齢者に怒られたり嫌がる可能性がある場合は、レトルト食品と分らないうちにお皿に盛り付けたり、1品だけ食卓に紛れ込ませたりなどして活用しています。

 出来合いのお惣菜やお弁当もたんぱく質が多めに入っていて、カロリーも高いのでオススメです。高齢者も食べてくれやすいのではないかと思います。(出典「在宅医療のエキスパートが教える年をとったら食べなさい」佐々木淳(2021年飛鳥新社)P197 より)

レトルトやお惣菜をうまく活用して自分を守る

サポナビ:最後に、高齢なご家族のための食事サポートに関して、ビジネスケアラー世代に伝えたいことはありますか?

室津さん:仕事をしている人も多く忙しいので、なるべく時短で楽に食事の準備ができるといいですね。

家庭も仕事も全部100%では倒れてしまうので、家庭・仕事・育児もそれぞれ80%の関わりで、全体のバランスを取っていくことが求められるのではと思います。

特に、食事準備や片付けについては毎日のタスクとなるので、食事の準備の負担を軽減できると良いと思います。

時短・嚥下・栄養面を考えて上手に一部レトルトやお惣菜を取り入れることに、「手抜きしちゃってるかな?」ということに罪悪感を抱かず自分を許してあげて欲しいです。

メーカーの努力により、栄養価が高くバランスの良い食事もいっぱいあるので、食事準備の負担を減らして、子世代の皆様にしかできないことにエネルギーをかけて日常生活のバランスを取っていただけたら幸いです。

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 フレイルを予防して長く健康でいていただくために食事の重要性をご理解いただけたのではないかと思いますが、同時に仕事をしながら親御さんの食事や栄養に気を配るのは大変だと感じるかもしれません。

 インタビューにもありましたが罪悪感を感じる必要はないので、嚥下の状態に合わせてドラッグストアやスーパーの介護用品売り場などで手に入る商品などを利用して、できることからはじめましょう。

 アサヒグループ食品の「バランス献立(やわらか食 パウチ入り)」は種類が豊富にあるので、あと1品食卓に足したい時にも便利です。そのままお皿に出して常温でお召し上がりいただくことも可能なので忙しい日々でご自身の大切な時間を守りながら親御さんのサポートができる商品として使ってみてください。

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この記事の監修者

サポナビ編集部

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