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高齢者の性格タイプ5分類 あなたの親は、適応型と不適応型のどちら?(ライチャード)

親の性格タイプ #コラム

 

この記事を書いた人

株式会社リクシス 酒井穣

株式会社リクシス 創業者・取締役 酒井 穣
慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg大学経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役(人事・長期戦略担当)を経て、2016年に株式会社リクシスを佐々木と共に創業。自身も30年に渡る介護経験者であり、認定NPO法人カタリバ理事なども兼任する。NHKクローズアップ現代などでも介護関連の有識者として出演。

著書:『ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2018)、『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2023)

 

高齢者の性格タイプ5分類

老年期(65歳以上の人)の生き方や社会への適応は、個人の性格と深い関係あると考えられています。これを体系化したのは、アメリカの心理学者スザンヌ・ライチャード(Suzanne Reichard)とされます。

この高齢者の分類は、利用法を誤ると年齢差別(=エイジズム;ageism)につながるので、注意が必要です。面白がって使うものではなく、課題を認識し、生活を改善するためにこそ用いられるべきものです。

また、タイプ分類のいずれかに当てはまるのではなく、複数のタイプにまたがる「複合型」になる高齢者もいます。とはいえ、良識のある人であれば、こうしたタイプ分けは「面白いけど、現実はもっと複雑」と考えるでしょう。

しかし、人間というのは高齢になるほど、個性が極端に出てくるものだったりします。要するに、若い人間よりも、タイプ分けに意味が生じやすいということです。もちろん、タイプ分けでは対応できないケースも多数ありますが、いわゆる「占いのような性格診断」よりは使えるというのが実感です。

なお、以下の記述は、複数の文献を参考としながら、KAIGO LAB編集部にて執筆しています。正確な内容を理解したい場合は、記事末の参考文献から原典をあたってください。

1. 適応型;円熟型

自らの老いを自覚しながらも、それによって活動意欲を低下させることがないタイプ。過去の自分を後悔することなく受け入れ、未来に対しても現実的な展望を持っている。老いによってできなくなることも、それはそれとして、新しい現実の中で満足を得られるタイプ。周囲が無理にアレンジしなくても、自分で自分の人生を進めようとするので、性格的な部分で、周囲が対応する負担が少ない。スマホのような新しい技術も、面白がって使えるようになる。

2. 適応型;安楽椅子型(依存型)

受身的に、消極的に老いを受け入れるタイプ。後は皆にまかせて、自分はのんびりという具合に、他人に依存しながら「気楽な隠居」であることを求める。積極的に新しいことには取り組まないが、誘われれば、新しい環境への適応もできる。性格的な背景から、生活不活性病にならないように、活動的な物事への取り組みをうながす必要がある。スマホのような新しい技術も、それが自分を楽にさせる便利なものであることが理解できれば、使いこなせる。

3. 適応型;装甲型(自己防衛型)

老いへの不安と恐怖から、トレーニングなどを積極的に行い、強い防衛的態度をとるタイプ。なんとか若い時の生活水準を守ろうとする。スマホのような新しい技術も、使いこなせないと恥ずかしいという心理から、受け入れようとする。責任感が強く、様々な活動を続けようとする。結果として無理をおし進めるリスクもあり、怪我などをしてしまうことも。性格的な背景から、本人の「まだまだ、現役だ」という自尊心を傷つけることなく、無理はしすぎないように注意する必要がある。

4. 不適応型;自責型(内罰型)

過去の人生全体を失敗とみなし、その原因が自分にあると考え、愚痴と後悔を繰り返すタイプ。典型的には、仕事に一生懸命だった反面、家族をかえりみず、現在は家族から相手にされない状況にあることを嘆くような高齢者。うつ病になりやすい。新しい技術にも適応しようとしない。いつまでも過去にとらわれることなく、反省すべきは反省しつつも、なんとか新しい関係性などを築いていく必要がある。

5. 不適応型;攻撃憤慨型(外罰型)

自分の過去のみならず、老化そのものも受け入れることができないタイプ。過去を失敗とみなし、その原因を自分ではなく、環境や他者のせいとして責任転嫁する。不平や不満が多く、周囲に対しても攻撃的にあたり散らすため、トラブルを起こす。高齢者として他者から親切をされても、それをポジティブに受け入れられない。周囲としては、どこまで献身的に対応しても感謝されることもないため、サポートすること自体が困難。

 

これは私たち自身の話でもある

ここで紹介した5分類は、老年期(65歳以上の人)に対するものではありますが、既に自分自身の中にも、このどの分類に至るかという「方向性」も見えるはずです。

老いてもなお、新しく変化していく社会に適応していけるかどうかが大事です。その結果として、自分だけでなく、介護などをお願いすることになる家族との関係も良好なものに保てます。

なんとか、よい老後をすごせるよう、今から自分自身を教育していきたいものですね。

※参考文献
・綿貫登美子, 『高齢期における主体的な選択と自己実現 -健康不安と生きづらさの中での生きがい―』, 千葉大学大学院, 人文社会科学研究(第29号)
・MEDIC MEDIA, 『介護福祉士国家試験問題解説(第8版)』

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