#仕事と介護の両立

今介護が始まったらどう動く?仕事を辞めない介護への備えと動き方(前編)

#仕事と介護の両立

2023年10月27日、リクシスは、第10回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。介護は突然始まることも多く、現役のビジネスパーソンが突如として介護と仕事の両立の壁に立たされたとき、働き方や介護の方法について、どのような選択を行うべきか悩む声が後を絶ちません。

今回は、20年以上にわたり2,000世帯以上のご家族の仕事と介護の両立支援に携わってきた、リクシスチーフケアオフィサー・木場氏が手掛けた新書「仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)」の出版記念とあわせて「介護が始まる前に何を準備しておいたらいいか」についての基礎的な部分を解説していただきました。

この記事ではその前編として、

  • いざという時まずどうしたらいいか
  • 事前にできることは何か

というテーマでまとめています。

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①「仕事を辞めない介護への備えと動き方(前編)」⇐このページのテーマ
「仕事を辞めない介護への備えと動き方(後編)」
「仕事を辞めない介護への備えと動き方(Q&A編)」

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▼当セミナーのアーカイブ動画はこちら(無料会員限定でご視聴いただけます)

 

登壇者プロフィール

リクシスCCO木場猛

木場 猛(こば・たける) 株式会社リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員

東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ作成や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。

3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。

【新書】「仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書」(日経クロスウーマン)

 

 

親に何かあったとき、何日会社を休む?

まずは少し想像してみてください。
あなたの親御さんが、外で転倒して救急搬送されました。病院から呼び出されて駆けつけると、大事にはいたっていないものの足の骨を折って全治1ヶ月とのこと。
1人では買い物もいけない状況ですが、治療自体は終わっているため自宅に帰ってきました。
親御さんの状況的に1人で暮らしていくのは厳しいので、介護をしていく必要があります。

さて、その日から、介護のプロに会い安定的な介護体制を築くまで、「何日かかって」「何日仕事を休む」ことになるでしょうか?

どのようなパターンがあるかみていきましょう。

リテラシーの有無で「両立」に大きな差が出る

介護は突然やってきます。
その状況になった時に、介護のリテラシーがあるかないかで、両立に大きな差が出てくることになります。

リテラシーがない方が介護をする場合

介護保険サービスがあるということは知っていても、このくらいではサービスを受けることができない、または受けるほどではないと考えてしまい、家族で看護することにしてしまうことが多いです。
高齢者の方が1ヶ月ほど安静にしていると、筋力が衰えてしまい、骨折が治ってもなかなか元の生活に戻れないことがほとんどです。リハビリしなければいけないということも考えられるでしょう。
そうなるとずるずると休む期間が伸びてしまい、場合によっては何年も経ってしまい、会社を辞めてしまうというパターンもあります。特別なことではなく、比較的よくある例です。

リテラシーが中途半端な場合

介護保険サービスがあることを知っていてそれを使おうと思ったとしても、サービスを受けるまでには時間がかかり、その間は家族でみていかなければなりません。
原則として、申請をして認定調査を受け介護認定が降りるまでには30日間必要です。そこからケアマネージャーを探してヘルパーを手配するまで、だいたい40日間かかってしまいます。
申請の手続きも慣れていないので、更に時間がかかってしまう場合もあります。

高いリテラシーがある場合

地域包括センターに相談し、最初の段階でケアマネージャーに相談することができれば、だいたい4日程度で介護体制が構築できます。
申請代行もケアマネージャーに頼むことができますので、ケアマネージャーはショートカットの方法を知っていて、場合によっては早めに介護体制を作ることが可能です。
申請代行を依頼することもできますし、最初の1ヶ月は介護度を想定し見込みの介護度でサービスを受けることもできます。

リテラシーの有無で、これだけ大きな差がつくのが、今の超高齢社会での「両立」のリアルといえるでしょう。

 

いざというときは、まず地域包括支援センターへ

地域包括支援センターは、65歳以上の方の生活に関する総合窓口です。要介護になる手前の段階から相談することができます。
不安になったら、まずは地域包括支援センターに相談するのが重要です。
介護保険の適応がなさそうな場合にも、高齢者福祉サービスや民間サービスを紹介してくれます。

 

要介護認定を受ける前にも相談可能

多くの方がイメージしている「介護申請をするタイミング」は、少し遅いです。
「骨折して入院した」「認知症で迷子になって警察から連絡があった」という何か出来事があってから申請する方がほとんどですが、介助が必要な状況になった時にはすでに要介護2に認定されるレベルにあることがほとんどです。

すでに助けが必要な状況の時に申請するでも良いのですが、その時には困っている部分にケアをするということしかできないことがほとんどです。
まだご本人ができることが多い、介護の手前の状況でプロの目が入れば、リハビリを受けたり、閉じこもりを防止したりなど、支援を受けられる内容も多岐にわたりますし、リハビリなどの効果が高く元気な状態を保ちやすいと言われています。

また、早い段階で介護保険に頼らず、ご家族だけで頑張ろうとしすぎてしまうのも危険です。
現代では、家族だけで介護を乗り切るというのは非常に難しくなっています。無理がきた時に介護サービスに頼る場合、親御さんがこれまで家族がやっていたことを他人がやることに抵抗感を持ってしまう可能性も出てきます。

「親が年をとってから、たまに会うと心配なことがある」「親が大変そうなので、時々買い物や片付けを手伝いに行くようになった」という段階で、地域包括センターに相談してみましょう。

 

いざというときの前に!事前に準備しておけること

事前にやっておくと、後々の負担を小さくできることをまとめてみました。

知っておいた方が良いこと

事前に知っておいた方がいいことは3点です。
全てをしっかり理解していなくても良いですが、少しでもどんなものがあるのかを知っておくとかなり違います。

①いざという時の相談先
近隣の地域包括支援センターの連絡先を調べる②どんなサービスがあるか
お住まいの自治体の介護保険や高齢者福祉のパンフレットなどを見てみる
保険外サービスの情報も知っておくと良い(介護専門職の方もまだあまり情報を多く持っていない場合が多いため)③介入のタイミングを測る方法
フレイルチェック、認知症の気づきチェックリストなど、これくらいで相談した方がいいかなというのを測るために使えるものがあることを知っておく

 

家族で確認しておいた方が良いこと

家族で確認しておいた方がいいことは、主に3つです。

  • 誰が介護することになりそうか
  • どこからお金を出すのか
  • 親御さん本人はどう考えているのか

特に下記のことについては、事前に家族でシュミレーションしておくと良いでしょう。

✓主たる介護者になりそうなのは誰?
1番近い人がやるのではないかと何となく全員が思っていて、なし崩し的に始まってしまうと、負担や不満が偏ってしまいます。
あらかじめ誰が主になるのか、家族全員で話し合っておくと良いでしょう。✓方針決定は誰がすることになりそうか?
単純に決まることではないと思うのですが、意志決定において最も強い人が誰なのかを把握しておくと後々負担が小さくなるでしょう。
意志決定の時にあまり関われないけど介護をするという場合には、どこに時間を費やす必要があるのか、誰を説得すべきなのか、あらかじめ心づもりができます。✓お金はどこから出す?
原則はご本人のお金なのですが、そのお金はあるのかないのか、ある場合どこにあるのかを確認する必要があります。口座や管理方法はあらかじめ把握しておくと良いでしょう。
また、 不足分や一時的な出費を家族が負担する場合の分担はどうするのかも考えておいた方が良いです。調べによると、介護の費用はご自身で出そうと思っていらっしゃる親御さんが大半です。

しかし、認知症になると口座が凍結されてしまうこともありますし、緊急時に本人が伝えられないけどお金が必要ということもあります。
まずは、親御さんの準備状況・資産の状況をできる範囲で確認しましょう。

急な病気やケガで入院し、しばらく本人が意識が無い・動けないという可能性は何歳でもありえます。

緊急時に代理で手続きをする方法について親御さんに確認し、下記のどちらかを準備しておく必要があります。

  • 金融機関の代理人カードを作っておく
  • 通帳・印鑑の置き場所がいざという時に家族にわかるようにしておく

 

親御さんと話しておいた方が良いこと

介護専門職はご本人の体が悪くなってから出会って支援をしていきますので、元気な時にどういう方だったのかはわかりません。
なので、そもそもご家族の方がどんな方でどういうことを考えているかなど、価値観をご家族が知っておいていただけると、リハビリなどのモチベーション設定などに役立ちます。

また、介護の話を切り出すのが難しいというご相談もよくいただきます。
切り出し方のタイミングについて、例をいくつかご紹介いたしましょう。

①タイミングを見計らう
親戚・知人・有名人の介護や老後の話題が出たタイミングで切り出す②他の親族経由で確認
親と年の近い親戚や他の兄弟に話してもらう③道具や他人を使う
自分史・エンディングノートを作っておいてもらう
専門業者などの他人に頼る

その他、写真の整理をすることもメリットが多いです。
親御さんが話をしなくても、写真の中にヒントや情報が表わされていることもあります。
ぜひ整理をしておいてみると良いでしょう。

後編に続く

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