年末年始に始める介護準備 職場での悩みと対策を産業ケアマネがずばっと解説（後半）

はじめに

2024年12月20日、リクシスは、第23回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

今回のテーマは「職場の介護準備」。

いつ始まるかわからない介護。もし急に始まってしまったとしても、望まない介護離職を選択することなく働き続けることができる環境を、今から作っておくのは非常に大切なことです。
しかし、実際には何から初めて良いかわからないという方も多いでしょう。
今回は、株式会社hareruya（ハレルヤ）を沖縄市に設立し、介護保険外の事業として「病院付き添いサービス」や「仕事と介護の両立サポート」を行っている産業ケアマネの大城五月氏をお招きし、「年末年始に始める介護準備」「職場での悩みと対策」について解説いただきました。

この記事では、

• 仕事と介護、どう両立する？
• 突然の介護に備えるために
• 介護離職を防ぐための準備

などのテーマでまとめています。

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①年末年始に始める介護準備 職場での悩みと対策を産業ケアマネがずばっと解説（前半）

②年末年始に始める介護準備 職場での悩みと対策を産業ケアマネがずばっと解説（後半）
⇐このページのテーマ

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登壇者プロフィール

大城 五月（おおしろ・さつき）
株式会社hareruya 代表取締役
日本単独居宅介護支援事業所協会 産業ケアマネ１級
日本介護支援専門員協会 ワークサポートケアマネジャー
国家資格キャリアコンサルタント

1980年沖縄県浦添市生まれ。
24歳から介護の仕事に携わり、2016年、「人生晴れるや～関わる人の明日を晴れやかにする～」を理念に、沖縄市に株式会社hareruya（ハレルヤ）を設立。
介護保険外の事業として「病院付添サービス」や「仕事と介護の両立サポート」を行う。
2023年4月、産業ケアマネらによる全国初『仕事と介護両立サポート協同組合』設立。

介護と仕事の両立についてのよくある悩み

下記のような言葉をよくお聞きします。

・遠方にいる親の今後が心配
・何かあった時に仕事を休めるのか
沖縄は離島ということもあって、まだ親が元気であっても、島外にいる親を思い、また島外にいる子どもが本島にいる親を思い、悩んでいらっしゃる方多くいるように感じます。

・子育てがまだまだ続くのに介護が始まったらどうなるのだろう
時間もお金も子育てで必要なのに、この上で介護が始まったら自分はどうなってしまうのかと切実に悩んでいる方が多いです。

・どのくらい費用がかかるのか
心配なことはたくさんあるけれど、特に費用がどれくらいなのかということが気になる方が多くいらっしゃいます。

・誰に相談したらいいのか
これまであげてきたような疑問点や不安なことを、じゃあ誰に相談すればいいのか悩まれています。

また、hareruyaが沖縄県で働いている方300名に「仕事と介護の両立支援に関するアンケート調査」を行った際に、こんな質問をしました。
「家族に介護が必要になったとき、今の職場で仕事を続けられますか？」
結果は、続けられるかわからないと回答した方が87%。働けると思うと回答した方は、13%しかいなかったのです。

「知る」ことで見えてくる両立の可能性

介護についてどんなことで不安を感じるのかというアンケートも行いました。

もっとも多かったのは「予測がつかず漠然とした不安」があるという回答です。他には、将来の見通しがたてにくい、介護保険の仕組みがわからない、両立するための仕組みがわからない、必要なサービスが受けられるかわからない、という回答もありました。

これは、将来や制度の理解ができていない、わからないということが不安につながっている方が多くいらっしゃるということです。
逆に言えば、先に知ることができれば、両立できる可能性があるのではないかと私は考えています。
色んなことを知ることで、それを組み合わせていけば介護は怖くないということがわかってきます。準備をすることは大切ですが、知ることで不安がなくなっていくこともあるでしょう。

また、会社に両立支援がないという不安もありましたが、両立支援制度は国で定められているため、会社に制度がなかったとしても国の制度が適用になります。
実際には、会社に両立支援が無いようにみえても、就業規則に記載されていることがほとんどです。

今後は、制度の改正により、企業の仕事と介護の両立支援に国が動いている状況です。まずは会社に聞くことができると良いですね。

相談先・連携の方法について

どこに相談したらいいのかわからないという方には、このような相談先をお伝えしています。

介護に関することは地域包括支援センター、制度に関することは上司・会社の相談窓口、または労働局・雇用均等室など、自分の不安を分析し、それぞれに合った相談先を考えるといいでしょう。

地域包括支援センター

ビジネスケアラー会議でも何回か出てきているとは思うのですが、まずは地域包括支援センターに相談してください。
地域包括支援センターは一般的に中学校区域に1つ設置されています。自分の住んでいる地域にはないということはありませんので、まずは設置されているということを知っておきましょう。
65歳以上の高齢者に関することであれば、介護のことじゃなくても、まだ介護が始まっていない状況でも、地域包括支援センターに相談して大丈夫です。

気をつけてほしいこととしては、自分が住んでいるところではなく、親御さんなど介護を必要としている高齢者の方が住んでいる場所にある地域包括支援センターにご相談してください。

また、多くの地域包括支援センターは、営業時間が平日の8:00~18:00の間となっているため、お仕事をしている方にとっては少し連絡がとりづらいかもしれません。
あらかじめ営業時間を確認しておくと良いかと思います。
今、不安に感じていることを相談するだけでも、良い情報が得られるでしょう。

上司・会社の相談窓口

多くの会社には介護に関する支援制度があります。ですが、それは聞いてみないとわからないことですよね。上司や会社の相談窓口に伝えてみると良いでしょう。
実際に介護に直面していない時に聞いてみても良いと思います。そこで会社側が「考えていかないといけない」と気づいて、従業員が働きやすくなる取り組みを進めていく可能性があります。

労働局・雇用均等室、家族介護経験者

会社に聞いたけれどよくわからないと言った方は、労働局の雇用均等室が担当になっていますので、聞いてみるのが良いでしょう。
また、周りに家族介護経験者がいらっしゃったら、あくまでその方の経験談ということにはなりますが、聞いてみるのも良いかと思います。不安な気持ちを1番理解してくれるのも、家族介護経験者です。

相談を受けた事例①介護量が増えてきた

夫の母親の介護をすることになった、仕事を辞めるしかないのかという相談を、ママ友からされたことがあります。

まずは会社に、介護に関する両立支援制度があるか確認するようアドバイスしたのですが、「パートで雇用保険しか入っていないので対象じゃないと思う」とのこと。
でも、大丈夫なんです。介護休業の制度は、日雇いの方以外ほとんどの方が対象になるので、まず聞いてみてほしいと伝えました。

次の日電話がかかってきて「聞いてみたけど、これまで両立支援制度を使ったことがある人もいないし、パートの人は対象じゃないと思うと言われた」とおっしゃっていました。
おそらく回答した総務の方が理解できていないのではないかと思い、辞めるのはもう少し待ってみても良いかもとアドバイスしたところ、後日、その総務の方が会社に確認し調べたところ、しっかり両立支援制度もあり、また、相談者も対象となることがわかったと報告をいただきました。

会社としても従業員には辞めてほしくないとのことで、この方をモデルとしてこれから仕事と介護の両立支援の取り組みを進めていくことになったそうです。
そのお話を聞いた時には、私もとても嬉しく思いました。

相談を受けた事例②5か年計画で考える

こちらは友人の話です。
数年前に祖母が認知症になったことをきっかけで、親御さんの介護について考えるようになったとのこと。最初は考えたくないと思っていたのですが、周りで介護の話をよく聞くようになったことも重なり、70代の親の介護について考え始めることにしたというのです。

その方に、今日お聞きしている皆さんに何かアドバイスはないかと聞いてみたところ「1回で話を全部聞こうとするのは無理です。自分も2年前からやっているけれど、回数を重ねないといけないことがわかりました」とおっしゃっていました。

最初は全然話ができなかったけど、言葉を変えて少しずつ話していくことで、親御さんが話を聞いてくれたり、話してくれたりするようになってきたそうです。
最近は、就活のセミナーに親御さんも一緒に参加することもあるとのこと。一緒に参加した上で、親御さんがどう思うかを聞いてみるそうです。面白いですよね。

仕事と介護の両立についてメディアも注目している

メディアにも注目をしていただいております。

私自身、父親が64歳の時に車にはねられて意識不明になり、今も要介護5で寝たきりで自宅で介護をしているという経験があります。産業ケアマネとして働いている私ですが、母親の介護離職を止めることができなかったという過去をちょっとだけ話している記事もありますので、ぜひご覧いただければと思います。

そういった経験もあり、もし介護離職してしまった方がいても、今後そういった方々が理解されて働きやすい環境を作れたらいいと思っています。
そのためには、今仕事と介護の両立に悩まれている方の課題を解決していく必要があると考えていて、こういった活動をしています。

参加者の皆さんへのメッセージ

家族の介護については、考えないようにしている方が多いかと思います。考えると辛くなることですし、出口が見えないことでもありますよね。

介護がもし始まったとしたら、まずは自分のことを第一優先に考えてください。その上で親の介護をするという順番を覚えておいてほしいです。
介護する人が良い状態だと、介護される人にとっても良い状況になります。
まずは、相談先がどこにあるのかなどは事前に把握しておくと良いでしょう。

親に話すことによって自分が楽になるということもあります。諦めずに話していくなど、できることから進めていってください。

介護について考えないといけないと気づいているけれど行動できない方が多くいらっしゃる中で、このビジネスケアラー会議に参加しているということは、もう両立支援の体制を整え始めているということだと私は思います。
大丈夫です。知って、整えていきましょう。

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この記事の監修者

サポナビ編集部