「ビジネス思考」で介護を乗り切る体験エッセイ『今日も私はシゴトを辞めない!』
「突然親が倒れた! シゴトと介護の両立はできるのか!?」
母も父も突然倒れ、いきなり同時多発介護になった独身ワーキングウーマン・中村美紀50歳。
まるでわからない介護なのに、父母の容態が変わるたびに次々と起こる問題に、仕事一筋の経験を活かした「ビジネスフレームワーク」を使って、なんとか解決策をひねり出し、乗り切っていくコミカルな体験物語。
親の介護のために知らなきゃいけないと思っても介護のしくみはわかりにくい!
「親が介護になったらどうしようーー」
介護が社会的話題になっている昨今。いずれくるかもしれない親の介護に対して、なんとなく不安は抱えているものの。親はまだ元気だし。日々仕事に追われて忙しいし。心のどこかにある「向き合いたくない」という忌避感が勝り、「んー今日は考えなくていっか」となってはいませんか。気持ち、わかります。私もかつてはそうでした。
が、しかし。私の親は、突然倒れました。
介護の知識なんて何も知らなかった私は、ものすごく大変な思いをしました。介護生活が安定し始めた今だからこそ、当時を振り返って思うのです。
「あの時、介護の“何”を知っておけばもっと楽だったのかーー」
私は介護のプロではありませんが、お仕事をさせていただいているという意味では情報編集のプロではあります。
そこで!
今回は、「やっときゃよかった」という反省の意味と、情報編集プロフェッショナルの威信をかけて、「3つだけ覚えておくとしたら、介護の何を知るべきか」という内容を、介護家族目線で整理していこうと思います。
▲いきなり複雑な介護知識を、全て知ろうとしても難しいもの。「まずはこれだけ」という目線で3つだけ覚えるとしたら、何に厳選する?これもなかなか疑問です。
「これだけは知っときゃよかった!介護の基礎3つのポイント」
当時の自分を考えたら「3つのポイント」程度しか記憶に残らないな、と思いました。
よって「介護に必要なポイントを3つだけおさえるとしたら何か」という視点でまとめてみました。
とりあえず困ったら「地域包括支援センター」
私は、当初「地域包括支援センター」を知らなくて、全て自分で解決せねばと情報収集に走り、専門家の皆さんの「介護のあれこれそれ、どうしますか?」という質問に自力で答えていきました。
あの時の心細かったこと!後に「地域包括支援センター」を知って、「最初から知っておけばよかった~」と思い、その後通いつめました。
今でも「知っときゃよかった」と思うポイントNO.1です。
「地域包括支援センター」は…
- 介護で困った時の相談に乗ってくれたり、適切な介護サービスの紹介をしてくれます。介護現場に詳しく、資料もたくさん。情報収集先にはもってこいです。
- 依頼すれば、介護計画書を作成する専門家「ケアマネジャー」の紹介もしてくれます。
- 問題は、「地域包括支援センター」の名称が地域によって異なること。サイト検索も非常にしにくいのが現状です。そんな場合は、専門検索サイトで探すのがおすすめです。
介護サービスを利用するには「最寄りの市区町村窓口に要介護申請」
介護になったら、介護保険を利用し、介護サービスを受けることができるのですが、これには申請が必要。私は当時、これも知りませんでした。
仕事と介護の両立環境を整えるには、介護サービスの利用検討は必須としたいところ。
介護サービスを利用するには「介護申請」をする。おさえておきたいポイントです。
「介護申請」をすると…
調査員の方が要介護者の現状を把握するために面談を実施します。介護の状態は「介護度」という形でレベル分けされますが、その元になるのがこの調査員判定です。
「地区町村窓口」は…
介護の相談をすると、相談先として「地域包括支援センター」を案内してくれます。最寄りの地域包括支援センターがわからない場合は、こちらでも教えてくれます。
▲大まかな介護の流れはこちら。介護をする側の状況も添えて図解化してみました。当事者になってしまった時に備えて、みなさまの介護のイメージが少しでもつくことを願って。
大まかな介護の流れはこちら。介護をする側の状況も添えて図解化してみました。当事者になってしまった時に備えて、みなさまの介護のイメージが少しでもつくことを願って。
介護サービスの種類は、ざっくり『来る・行く・モノ・泊まる・入所』の5つでとらえておくと後が楽
細かなサービスがあるのは利用者としてはありがたいことなのですが、結果複雑になっているので、適切な選択を家族だけで行うのはなかなか難しい部分があります。
だからといって、介護当事者でない段階から把握するのは到底無理!などとして、「まだ知らなくていいや」と思ってしまうのは本末転倒。
私は、介護施設に種別があるとは知らないまま、あれもこれもと見当違いの施設まで見学してしまっていました。
今思うと、とても非効率。
まだ介護じゃないのに現段階でいろいろ知るのもね、と感じられる場合は、
「介護サービスは大きくいうと『来る・行く・モノ・泊まる・入所』の5つに大別される」
「介護施設には種類がたくさんある」
「介護度で利用できるサービスが違う」
くらいの理解に今はとどめて、徐々に詳しくなっていく。
介護当事者になったら、ケアマネージャーなどの専門家に相談しながら決めていく、と割り切るのも手です。
「来るサービス」とは…
- 掃除や食事などの生活援助をしてくれる「訪問介護(ホームヘルプ)」
- お風呂を手伝ってくれる「訪問入浴介護」
- 看護師が来てくれる「訪問看護」
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が来てくれる「訪問リハビリテーション」
- 医師などが来て療養上のアドバイスをくれる「居宅療養管理指導」
など「家に来てくれるサービス」のことです。
「行くサービス」とは…
- デイサービスセンターなどに行き、食事や機能訓練を受ける「通所介護(デイサービス)」
- 介護老人保健施設や医療機関などでリハビリを受ける「通所リハビリテーション(デイケア)」
など「行って利用するサービス」のことです。
「モノサービス」とは…
- 日常生活の自立を助ける用具を貸し出してくれる「福祉用具貸与」
- 日常生活の自立を助ける用具購入費用の一部を補助してくれる「福祉用具購入費の支給」
- 日常生活の自立を助ける家の改修費用の一部を補助してくれる「住宅改修費の支給」
など、「家の改修や生活補助道具を支援してくれるサービス」のことです。
「泊まるサービス」とは…
- 短期入所施設に泊まって、介護や機能訓練を受ける「短期入所生活介護/短期入所療養介護(ショートステイ)」のことです。
「入所サービス」とは…
- 「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」など、「施設に入所するサービス」のことです。
※各自治体によってサービス内容・名称が変わる可能性があります。詳細は最寄りの自治体HPなどでお調べください。
▲介護の無料相談ができる行政機関が、素早く検索できる!地域包括支援センターマップ
介護サービス概要を知ったところで、本当に難しいのは「適切なサービス選び」
やっとの思いで介護サービスを把握したものの、難しいのはその選択です。
介護で一番大事、かつ大変だとされているのは初動。
この混乱期に、適切な介護サービスを選択して、安定した日常生活を取り戻すのは、なかなか大変。私は、内容を知らないと選択できないと必死に調べましたが、詳しくなればなるほど選択に迷いました。
適切なサービスを選択するためには、サービスの詳細を把握するのも大事ですが、もっと大事なのは「家族として何をしたいのか」意思を固めることだと思います。
担当ケアマネージャーがつけば、サービスの紹介やアドバイスをしてくれますが、最終的にそれを決めるのは我々利用者側です。
介護をする自分たちの身を守るためにも、仕事との両立環境を作るためにも、まずは「こうしたい」と目的を定めて、専門家であるケケアマネジャーに相談し、積極的に介護サービスを利用することを考えることが得策だと思いました。
これで、ひとまずシゴトを辞めなくてすみそうです。
ひとつひとつ山を乗り越え、今日も、心の中で叫びます。
「こうして私はシゴトを辞めない!」
まとめ
介護の知識は知っておいた方がいいとわかっていても、なかなか向き合いたくないあなたへ、情報編集のプロではある筆者が、突然親が倒れて困った当時を振り返って思った、【これだけは知っときゃよかった!介護の基礎Point3】はこちら。
- 困ったときは「地域包括支援センター」
- 介護サービスを利用したいときは「最寄りの市区町村に要介護申請」
- たくさんある介護サービスの把握は、ざっくり「来る・行く・モノ・泊まる・入所」の5つでとらえておくと後が楽
▼地域包括支援センターについて詳しく知りたい方はこちら
地域包括支援センターとは?役割や相談できることについてわかりやすく解説
●筆者プロフィール
中村美紀
クリエイティブコンサルタント・編集ディレクター
(株)リクルートグループに20年在籍。副編集長・デスクとして10以上のメディア実績を持つ。2012年に独立。紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ教育・組織コンサルタントなどで活動中。国家資格キャリアコンサルタント・米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
HP https://miki-nakamura.com/
介護ブログhttps://oyakaigo.miki-nakamura.com/
この記事の監修者
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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