「ビジネスケアラー」という言葉を、聞いたことはありますか?
それは、まさに“あなたかもしれない誰か”を指す言葉です。
仕事をしながら、家族の介護も担っている人たち。
今、日本ではこの「ビジネスケアラー」が急増しており、もはや一部の人の話ではありません。自分はまだ先のこと…と思っていても、ある日突然、始まるのが介護です。
この記事では、なぜビジネスケアラーが増えているのか、どんな問題を抱えやすいのか、そしてどうすれば仕事と介護を両立できるのかを、やさしく解説していきます。
大きな背景にあるのは「超高齢社会」。
とくに80歳以上の高齢者が急速に増えており、家族による介護の必要性が高まっています。
さらに、共働き世帯や独身者の増加により、家庭の中に「介護に専念できる人」がいなくなってきたことも要因です。
つまり、仕事を持っている人がそのまま介護も担う──。それが当たり前になってきているのです。
仕事前に親の支度をして、帰宅後にはお風呂や食事のサポート。
休日も休めない。そんな生活が続けば、当然、心身ともに疲弊していきます。
疲れていても「周りに迷惑をかけたくない」「キャリアに響くかもしれない」と我慢し続けてしまう…。そのストレスが、さらに負担を重くしてしまうのです。
企業に介護休業や短時間勤務制度があっても、「そもそも制度の存在を知らなかった」「申請の仕方がわからない」などの理由で利用されていないケースも多くあります。
制度は、知ってこそ、使ってこそ意味があります。
だからこそ、企業側も社員一人ひとりに情報を届ける工夫が必要です。
介護と仕事をどうしても両立できず、やむなく離職を選ぶ人もいます。
これは個人にとっても、企業にとっても大きな損失です。
介護がきっかけでキャリアを手放す──それは、誰にとっても望ましい未来ではありません。だからこそ、両立を可能にする仕組みと考え方が必要なのです。
訪問介護やデイサービス、家事代行、宅食、見守り機器など…
介護をすべて家族だけで担う必要はありません。使えるものは、遠慮なく使ってください。
迷ったら「地域包括支援センター」に相談すれば、今の状況に合ったサービスを一緒に考えてくれます。
介護休業、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイムなど。
会社には、両立を助けてくれる制度が用意されていることもあります。
「使えるかどうか」ではなく、「使う前提」で確認してみてください。上司や人事に相談することも第一歩です。
ビジネスケアラーは、とかく「周囲のことばかり」考えがちです。
でも、あなた自身が倒れてしまっては、誰も助けられません。
心が疲れてきたと感じたら、まずは休む時間をつくってください。
制度やサービスは「仕事のため」だけでなく、「あなたの心と体を守るため」にもあります。
誰もが、初めての介護は不安です。
何が正解かわからないし、どう進めればいいか迷って当然です。
そんなときこそ、話してください。
友人でも、同僚でも、支援センターでも。言葉にすることで、少しずつ整理されていくことがあります。
「ビジネスケアラー」とは、今や他人事ではなく、誰にでも起こりうる現実です。
でも、備えておけば、急に慌てなくても済みます。
そんな小さなことからでも、両立の第一歩は始められます。
あなたがあなたらしく働き続けるために──今、できる準備を始めてみませんか?
介護プロ編集部