夜間対応型訪問介護は、夜間(18時〜8時)に訪問介護員(ホームヘルパーなど)の介護が自宅で受けられる介護保険サービスです。
中重度の要介護の方でも、24時間安心して在宅生活が送ることができるよう、2006年4月の介護保険制度の改正により創設されました。
夜間対応型訪問介護には、大きく分けて「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。「定期巡回」は、介護スタッフが定期的に訪問し、安否確認や排泄介助、おむつ交換、体位交換などを行います。「随時対応」は、急な体調変化や転倒などのトラブル時にオペレーターへ連絡すると介護スタッフが駆けつけてくれ、介護や救急車の手配などを行ってくれます。
利用者にとって安心できるサービスであることはもちろん、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が夜間介護ができない時や介護負担を軽減したい時などにも利用されており、両者にとって心強いサービスです。
在宅介護をされている方に重宝されている夜間対応型訪問介護は、具体的にどのような時に利用されているのでしょうか? 主なケースや利用に向いている方の例を見てみましょう。
一人暮らしの高齢者の方
夜間のトイレ介助やおむつ交換、体位交換、室温調整、就寝・起床準備、バイタルチェック、安否確認などを毎日行ってもらえるため、ご本人も離れて暮らすご家族の方も安心できます。特に一人暮らしの方は、寂しく不安な夜間に誰かが巡回に来てくれることは、精神的にも気持ちが和らぎます。
老老介護で人の手が借りたい方
老老介護では、体力が必要な介護は困難です。夜間の日常的な介護をはじめ、急に手助けが必要となった際には介護スタッフが駆けつけてくれ、心強い味方となってくれます。
支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方の負担が大きい時
夜間の介護が日常的になると、同居するご家族の方の負担は大きくなっていきます。介護者ご本人が夜間の介護に気を使ってしまうケースも珍しくありません。夜間対応型訪問介護は、定期的に来てくれる介護スタッフに任せられるので、お互いのストレスも軽減できます。
また、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方が、仕事や用事で夜間にご不在時の利用も可能です。
夜間対応型訪問介護を利用するための条件は、以下の方に限られます。
利用できる方
|
夜間対応型訪問介護は、地域密着型サービスなので、必ず事業者と同じ市区町村に住んでいることが条件となります。
また、ご自宅へ訪問するサービスなので、施設(有料老人ホームやグループホームなど)に入所している方やショートステイ・小規模多機能型居宅介護などで施設滞在中の方は利用できないので注意が必要です。
夜間対応型訪問介護サービスには、大きく分けて3つのサービスがあります。
|
定期巡回は、ケアプランに基づき訪問回数や時間が決められます。介護スタッフは、あらかじめ決められた時間にご自宅を訪れます。1回あたり約30分が目安となっており、時間内で安否確認をはじめ身体介助(排泄介助、おむつ交換、寝返り介助など)を行います。必要に応じて時間を延長も可能ですが、加算料金が伴います。
定期巡回サービスは、利用者の生活リズムにあわせ、必要な時間に必要な身体介助を受けられることができるため、例えば夜9時に服薬や就寝準備に来てもらい、夜1時に再度来てもらい排泄介助や寝返り介助に来てもらうといった利用もできます。
随時対応サービスは、利用者から事業者へ通報があった緊急時に、介護スタッフが自宅へ訪問するサービスです。
例えば急な体調の変化、自宅で転倒して動けなくなった時など、駆けつけた介護スタッフにより必要な介助や救急車の手配といった状況に応じた対応をしてもらえます。
利用者は、契約している事業所から「ケアコール端末」という通信機器を借り受け、ボタン操作で事業所への緊急連絡をすることができます。
定期巡回サービスと同様に、1回の訪問につき約30分が目安で、サービス提供時間内なら何度も利用できますが、訪問回数ごとに費用がかかるので注意が必要です。
オペレーションセンターサービス(オペレーションセンター対応サービス)は、利用者からの通報を受けたオペレーターが、通報内容に応じて介護スタッフを派遣したり、主治医に連絡をとったり、救急車を手配するなどの適切な対応やアドバイスを行います。
通報を受けるオペレーターはすべてケアマネジャーや看護師、准看護師、保健師、介護福祉士などの資格所有者で、センターに保管されている利用者の介護状況や身体状態のデータを元に対応してもらえることも、安心要素となります。
オペレーションセンターは、利用者約300人に1カ所設置されていますが、利用者が少なく訪問ヘルパーが利用者の通報に十分対応可能な事業所は、オペレーションセンターを設置しなくても良いことになっています。
夜間対応型訪問介護を利用する上で注意すべき点として、以下のような援助は受けることはできないので心得ておきましょう。
夜間対応型訪問介護サービスの費用は、オペレーションセンターを設置している事業所と設置していない事業所で利用料金が異なります。
利用には、月額料金に加え、1回利用するごとの料金が必要です。
通報に利用するケアコール端末のレンタル料・設置料は、月額料金に含まれています。
日中もオペレーションサービスの利用ができる事業所もありますが、別途月額費用が必要です。希望する場合は、サービスの有無と費用を事前に確認をしておきましょう。
夜間対応型訪問介護の費用の目安
サービスの種類 | 利用料金(自己負担1割の場合) | |
オペレーションセンターを設置している事業所 | 基本夜間対応型訪問介護 | 1,025円(1ヶ月) |
定期巡回サービス | 386円(1回につき) | |
随時訪問サービス
(1名による訪問の場合) |
588円(1回につき) | |
随時訪問サービス
(複数名による訪問の場合) |
792円(1回につき) | |
オペレーションセンターを設置していない事業所 | 2,800円(1ヶ月) |
出典:「介護給付費単位数等サービスコード表 (令和3年4月施行版)」
夜間対応型訪問サービスは、1回の利用ごとに料金が加算される仕組みなので、無計画に何度も利用すると、後日に高額な請求額となり慌てるケースも起こり得ます。ケアマネジャーと作成したケアプランに基づき計画的な利用を心得ておきましょう。
夜間対応型訪問介護サービスを利用したい場合は、まずケアマネジャーへの相談が必要です。
介護保険サービスには、夜間対応型訪問介護サービスと似ている「定期巡回・随時対応型訪問看護介護」というサービスがあります。両者の違いはどんな点なのか、見ていきましょう。
夜間対応型訪問介護 | 定期巡回・随時対応型訪問看護介護 | |
費用 | 月額定額料金+サービス1回ごとの料金 | 月額定額料金 |
サービス提供時間 | 午後6時〜翌朝8時 | 24時間 |
どちらのサービスも緊急時の対応が可能で、介護ケアの内容には大きな違いはありませんが、夜間対応型訪問介護では医療ケアを受けることはできません。
両者のサービスを併用することはできないので、利用する際はどちらが利用者に適したサービスかを見極めて検討しましょう。
夜間対応型訪問介護は、在宅介護の方が夜間に必要な介護を依頼できるだけでなく、緊急時の通報システムやオペレーションサービスが導入されていることが大きな特徴で、一人暮らしの方や老老介護の方にとっては、より安心して暮らせるサービスです。
いくつかある訪問サービスと比較しながら、利用者とご家族のニーズに適したサービス選びをしていきましょう。
サポナビ編集部