居宅介護支援事業所とは、要介護者の在宅介護における相談や自宅で自立した生活を送るための計画、居宅サービスの調整を行う拠点と言える場所です。
事業所にはケアマネジャーが常駐しており、必要なケアプラン(居宅サービス計画書)を作成するとともに、介護サービスを提供するための連絡や調整などの支援が主な業務です。また、介護保険施設等への入所が必要と認められる場合は、施設への紹介も行います。
居宅介護支援は介護保険から利用料が賄われるため、利用者の現在のところ負担費用はありません。居宅介護支援事業所のケアマネジャーへケアプランの作成や相談、サービスの日程調整などを依頼した際も、利用料金は不要です。これは、居宅介護支援の重要性、利用の促進、利用者が自宅で自立した生活が送れるようにサポートしたいという介護保険制度の方針が反映されているためです。
(※国では有料化の議論があり今後は変わる可能性もあります。)
居宅介護支援事業所では、要介護者が自立した日常生活を送れるよう、利用者を第一に考えて、介護サービスなどを利用するための支援をします。具体的な役割とサービス内容を見ていきましょう。
居宅介護支援事業所は、経験豊富なケアマネジャーが在宅介護に関する相談を受け付けてくれる窓口です。
利用者自身の身体状況や家庭環境などの聞き取りを行い、ひとりひとりのケースに応じて必要とする介護サービスの手続きやアドバイスなど、介護についてのあらゆる相談にのってくれる強い味方と言えるでしょう。利用者やそのご家族も相談ができるうえ、個人情報の守秘義務があるので安心して話し合いができます。
要介護の認定を受けた方が介護保険サービスを利用するためには、必ずケアプランが必要となります。ケアプランを作成するには居宅介護支援事業所を利用することが一般的です。
ケアマネジャーによって作成されるケアプランには、在宅で自立した生活を送るための目標をはじめ、利用する介護サービスの種類や頻度が記載されます。居宅介護支援事業所は、サービス提供事業所や関係機関と連絡を取り合い、調整を行うことで、利用者への適切なサービス提供を確保します。
利用者の身体状況や環境は時間の経過とともに変化するので、ケアプランは柔軟に見直す必要があります。ケアマネジャーは利用者の要望や生活状況を正確に把握するために、月に1回以上利用者の自宅を訪問することが一般的です。
利用者に困りごとなどがあれば、定期訪問時や電話などでケアマネジャーに相談することができます。積極的に相談することは、最適なケアプランの作成に役立ちますので、要望や不安など、気軽に話してみましょう。
介護保険サービスを利用するには、まず自治体に申請を行い要介護認定を受ける必要がありますが、申請者ご自身やご家族が諸事情により申請できない場合、居宅介護支線事業所のケアマネジャーが代行申請を請け負うことができます。また、介護認定の更新手続きや区分変更時の申請についても代行申請が可能です。
居宅介護支線事業所は、居宅介護サービス事業者や各機関(医療機関や自治体など)と利用者の間に入り、連絡や調整役を担います。
具体的には、ケアプランに基づいた介護サービスをスムーズに実行できるよう、ほかのサービス提供事業者との利用日程・回数調整などを行います。また、必要に応じて利用者の状況や環境について関係機関と情報共有を行うため、日頃から聞き取りや相談などで情報収集に努めます。
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居宅介護支援事業所によるサービスを利用できるのは、自宅で介護を受けている要介護1〜5の認定者の方です。在宅介護の方が利用対象者ですが、軽費老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅など、自宅とみなされる施設への入居者の方も利用対象者に含まれます。
利用者の自宅(または入居施設)にケアマネジャーが月1回以上訪問し、ケアプラン見直しためのヒアリングや状況把握が行われます。
要支援1・2の方も介護予防として同様のサービスを受けられますが、利用窓口は居宅介護支援事業支所ではなく、地域包括支援センターとなります。要支援認定の方の場合、ケアマネジャーのご自宅訪問頻度は3ヶ月に1回以上が一般的です。
介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。認定を受けた後は、以下のような流れになります。
居宅介護支援事業所を見つける方法は、主に2つあります。
1つ目は、住所地の市町村にある介護相談窓口や地域包括センターを訪ねてリストをもらい選ぶ方法です。ここでは、居宅介護支援事業所を含む介護サービス事業所の所在地を案内してもらえ、同時に介護保険についての説明も受けることができます。
2つ目は、インターネットで検索する方法です。厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」は、居宅介護支援事業所だけでなく、検索地域の介護サービス全般に関する情報を調べることができ、地図表示や事業所の情報収集も可能です。
事業所を選び、契約をしたら、所属するケアマネージャーの中から担当ケアマネジャーを決定します。ケアマネジャーの選定方法は、事業所が選任するか利用者が選任するかのどちらかです。
介護保険サービスの利用料金は、所得に応じて1~3割が自己負担となっていますが、居宅介護支援は、介護保険から全額給付されるため利用者の自己負担は0円です。
事業所と契約した後に行う担当ケアマネジャーとのやりとりや相談についても、料金は発生しません。
居宅介護支援事業所は、地域包括センターや自治体の介護保健課などの窓口でリストをもらうことができますが、数ある居宅介護支援事業所の中から、どこと契約したらいいのか?と、迷う方は少なくありません。居宅介護支援事業所選びには、いくつかのコツがあるので参考にしてみてください。
居宅介護支援事業所は、利用者の住所に近い場所がおすすめです。何かあった時に迅速な対応をしてもらうことができ、お住まいの地域の介護・福祉情報にも精通しているため、安心感が得られるという大きなメリットがあります。
「特定事業所加算」とは、質の高いケアマネジメントを実施している居宅介護支援事業所に対して、市区町村から支払われる介護報酬が増額されることです。24時間体制で相談を受け付ける、ケアマネジャー1人あたりの担当利用者数に制限を設けるなど厳しい条件を満たしているため、質の高い支援が受けられるという、ひとつの目安になります。
特定事業所加算を受けている居宅介護支援事業所かどうかは、厚生労働省が管理する「介護サービス情報公表システム」で確認してみてください。
定期的に通院しているかかりつけ病院がある場合、病院が併設している居宅介護支援事業所へ相談するとよい場合もあります。医療・介護の連携が図りやすく、健康状態や持病を理解した上で、より利用者に適したケアプラン作成への反映がしやすいというメリットがあります。
また、医療機関ではなくサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどの入居施設に、自社の居宅支援事業所が併設されている場合もあります。入居者は必ず利用しなくてはならないという決まりではないので、ケアマネジャーとの相性やケアプランの提案をよく吟味して、契約するかどうかの判断をしていきましょう。
在宅介護生活を送るうえで、家庭の事情や金銭面の話も隠さず相談していくことになる担当ケアマネジャーは、信頼できるかどうか?相性はいいか?という観点で選ぶことがとても重要になってきます。ケアマネジャーを選ぶ際、以下のポイントを参考にしてみてください。
同じ事業所でもケアマネジャーの能力には差があります。経験豊富で優秀なケアマネジャーでも、人によってはご本人やご家族と相性が合わないことはありますので、選定時にはお互いの相性も考慮に入れましょう。
なお、担当ケアマネジャーの変更は何度でも可能です。相性が合わないと感じた場合は、ストレスなど抱え込まないよう、居宅介護支援事業所へケアマネジャーの変更希望を伝えましょう。
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良いケアマネジャーの選び方・チェックポイントとは?
居宅介護支援事業所は、在宅介護の方のための介護保険制度や介護保険サービスについての相談窓口で利用するにあたっての料金は不要です。
居宅介護支援事業所は、地域包括センターや自治体窓口で配布されている事業者リストやインターネットの検索で見つけることができます。まずはお住まいの地域でいくつかリストアップをし、実際に相談をしてみながら、利用者の方とご家族の方が安心して任せられる事業所を見つけることから始めてみてください。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。