「ケアプラン」は別名「居宅サービス計画書」とも呼ばれ、一人ひとりの状況に応じて、どのような介護・医療等のサービスを受ければ自立した生活が送れるようになるかという考えのもと、目標や必要なサービス内容・方針が記載された計画書のことです。
要介護または要支援の認定を受けた後、介護保険を使ったサービスを利用する際に、必ず必要となる書類です。
ケアプランは、要支援か要介護かどちらの認定を受けているかで、作成者が異なります。
要介護の方の場合、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーへケアプランの作成を依頼します。ケアマネジャーの正式名称は「介護支援専門員」で、介護サービス全体を管理(ケアプランの作成、サービス事業者との調整など)する役割を持つ資格職です。
一方、要支援者の方の場合、介護予防ケアプランとなり、お住まいの居住地にある地域包括支援センターに在籍している保健師やケアマネジャーが作成を担当します。
専門家の手を借りずに、利用者ご自身や支援者(介護家族・ビジネスケアラー)で作成する「セルフケアプラン(セルフプラン)」という方法もありますが、専門的な知識や各事業者や機関とのやり取りが必要になるため、現状、自己作成をされる方は極めて少数で、ケアマネジャーや地域包括センターへ依頼するのが一般的となっています。
ケアプランは次の3種類に分かれており、それぞれに対象者や目的が異なります。
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居宅サービス計画書
対象者:要介護1〜5の認定を受けた方、主に在宅介護を受けている方
ケアプランの目的:自宅で過ごす要介護の方が介護サービスを利用するため
居宅サービスの種類 | サービス内容 |
訪問サービス | 訪問介護
訪問入浴介護 訪問看護 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 |
通所サービス | 通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション |
短期入所サービス | 短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護 |
その他のサービス | 特定施設入居者生活介護
福祉用具のレンタル 特定福祉用具の購入 住宅改修 居宅介護支援事業 |
施設サービス計画書
対象者:要介護1〜5の認定を受けた方
ケアプランの目的:特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院(介護療養型医療施設)に入所する方へのケアを計画立てること
介護予防サービス・支援計画書
対象者:要支援1〜2の認定を受けた方、主に在宅介護を受けている方
ケアプランの目的:介護予防サービスを利用するため
介護予防サービスの内容 |
介護予防訪問入浴
介護予防訪問看護 介護予防訪問リハビリテーション 介護予防通所リハビリテーション 介護予防福祉用具のレンタル 介護老人福祉施設への介護予防短期入所 介護予防認知症対応型通所介護 介護予防小規模多機能型居宅介護 介護予防認知症対応型共同生活介護の短期利用 総合事業の訪問型サービス 総合事業の通所型サービス |
利用者からの相談を受け、ケアマネジャーがケアプランを作成する一連の流れのことを「ケアマネジメントプロセス」と言います。ケアマネジメントプロセスは、以下の7つの手順から成り立ちます。
なお、ケアプラン作成過程の費用はすべて介護保険でまかなわれるため、利用者の自己負担はありません。
1 | インテーク | 最初に利用者とそのご家族から対面や電話で受ける相談。 利用者の身体状態や生活環境の把握、希望、問題点などを聞き取る。 |
2 | アセスメント | 実際に利用者の自宅を訪問。 利用者の健康状態や介護の状況、住居環境や希望など確認し、厚生労働省による「課題分析標準項目」に沿って課題を分析。 |
3 | ケアプラン原案の作成 | アセスメントの結果をもとに、ケアプラン原案を作成。 どのようなサポートがどれくらいの頻度で必要なのか具体的な目標を設定し、サービス提供事業者との連絡・調整を行う。 |
4 | サービス担当者会議 | ケアマネジャー、利用者本人と家族、介護サービス提供事業者や主治医などが出席し、ケアプラン原案が利用者やご家族の希望に沿ったものかどうかを協議・確認。 |
5 | ケアプラン原案の修正・再提案・同意 | サービス担当者会議で得た意見をもとに、ケアプラン原案を修正・再提案するか、問題がなければ文書で利用者・家族から同意を得る。 |
6 | ケアプランの完成 | 完成したケアプランを、利用者・家族および介護サービス提供事業者へ交付。 利用者は正式なケアプランに自署または記名・押印を行う。 |
7 | モニタリング | ケアプラン公布後、介護サービスが適切に提供されているかどうか、月1回以上の頻度でケアマネジャーが利用者の自宅を訪れて確認。
見直しが必要な場合は、再度アセスメントをおこない、ケアプランを修正・再交付を行う。 以後、ケアプランは6ヶ月に1度、見直しを行っていく。 |
実際のケアプランを知るために、居宅サービス計画書を一例に見ていきましょう。
居宅サービス計画書は、第1表〜7表の7枚の書類で構成され、このうち第4表と第5表を除く5枚の書類が、利用者とケアマネジャーで共有されます。
第1表~第3表:アセスメントが基になる書類
第4表~第5表:ケアマネージャーが保管する情報整理のための書類
第6表~第7表:保険給付に必要な書類
名称 | 記入内容 |
第1表:居宅サービス計画書(1) | アセスメントをもとにまとめた利用者と家族の意向、総合的な援助の方針 |
第2表:居宅サービス計画書(2) | 利用者の課題(ニーズ)、それに伴う長期と短期の目標、課題の改善に向けた具体的な介護サービスの内容 |
第3表:居宅サービス計画書(3) | 介護サービスを組み合わせた1週間のタイムスケジュール表 |
第4表:サービス担当者会議の要点 | サービス担当者会議で話し合われた内容の記録(ケアマネジャーが所持) |
第5表:居宅介護支援経過 | ケアマネジャーとの相談内容や事業所との連絡・調整内容の記録(ケアマネジャーが所持) |
第6表:サービス利用表 | サービスを提供する各事業者の実施計画(サービス内容や利用時間など)の月間スケジュール |
第7表:サービス利用表別表 | 1ヶ月の介護サービスの利用単位数と費用 |
こちらが実際の「「第1表 居宅サービス計画書(1)」です。
全ての居宅サービス計画書は、厚生労働省「居宅サービス計画書標準様式及び記載要領」からダウンロードが可能です。
ケアプランを作成するにあたって大切なのは、利用者ご本人やご家族の希望、介護と支援が必要なポイントを明確に伝え、ケアマネジャーに任せきりにしないということです。
ケアマネジャーは介護の専門家で様々なサービス内容に精通していますが、利用者の方やご家族の気持ちや問題点などは、伝える努力をしなくては理解してもらうことができません。
納得できるケアプランの作成をしてもらうためにも、ケアマネジャーとの面談時には、以下のようなポイントに気をつけて意向を伝えてみましょう。
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プラン作成後も、ケアマネジャーが月に1度利用者を訪問し「モニタリング」が行われます。具体的には、計画通りにサービスが提供されているかどうか、またプラン自体に過不足がないか、利用者やご家族の状況に変化がないか、掲げた目標の達成度の確認などです。
ケアプランは、課題や目標の見直し・変更や再作成をすることが可能です。実際にサービスが運用されるとイメージと違った、スケジュールに無理があった、サービスの変更をしたいなど何か問題や希望の変化が生じた場合は、ケアマネジャーへ随時相談をしましょう。
利用者の介護度が変わった場合には、要介護認定の区分見直しと併せてケアプランの見直しが必ず行われます。
ケアプランは、ケアマネジャーや地域包括センターを介さずに、利用者自身やそのご家族が作成することも可能です。専門知識を要するため、セルフケアプランを行われる方は少数派ですが、以下のメリットとデメリットを理解のうえ、ご自身に適したケアプランの作成方法を選んでみてください。
セルフケアプランを行う場合は、自治体の窓口や地域包括センターへお問合せを。
ケアプランは、利用者ひとりひとりの状況や状態に合わせ、適切な介護サービスの提供が考慮された重要な計画書です。
ケアマネジャーは、ケアプランの作成だけにとどまらず、介護の必要な生活を送るにあたり、利用者とそのご家族の強い味方となってくれるキーパーソンです。今後、どのような生活をしていきたいのか、どのようなサービスを必要としているのか意向や希望を明確に伝え、ケアマネジャーとしっかり話し合いをしながら、理想のケアプラン作成を目指していきましょう。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。