在宅勤務が増え、デスクに座り続けている時間は、以前より格段に長くなっている気がしますね。今日はこの「座りっ放し」が健康に与えるリスクについて、最新の研究結果をご紹介したいと思います。
実は、「運動不足」は既に死亡要因でいうと第4位のファクターであり、WHOは毎年約320万人が運動不足が遠因で死亡していると分析しています。
中でも、「座りすぎ」は「第2の喫煙」と称されており、座りすぎによってどのような健康リスクが生じるかを論じる研究成果は、これまでにも数多く発表されてきました。
例えば、2012年にイギリスの研究者たちが約80万人を対象に調査した研究では、長時間座ったままの生活を続けると、糖尿病になる確率が17%上がり、心臓病やがんの発症リスクも7~9%上昇することが明らかになりました。
また、2017年に発表されたカリフォルニア州大学の研究では、10時間以上座り続ける生活をしている高齢者女性の細胞は、こまめに運動している同年代女性の細胞よりも、8年分も老化が進んでいたことが分かっています。
そんな中、昨年1月、コロンビア大学のキース・ディアス教授率いる研究チームが、「座っている総時間数」よりも「1回あたりの座りっ放しの時間」の方が深刻な健康リスクを派生させる、という最新の研究成果を発表しました。
この研究で調査対象となったのは、45歳以上の約8000名の米国人。研究者チームは、2009年から2013年までの彼らの生活・運動記録と、2017年までの死亡率データを組み合わせ、座っている時間や運動量と早期死亡リスクとの関係性を解析しました。
その結果、30分以上連続して座らない生活をしているグループの早期死亡リスクが最も低く、たとえ座っている総時間は長くても、間に30分の軽い運動を行うと17%、間に30分程度の負荷の運動を行うと35%も早期死亡リスクが低減することが分かったと、研究者たちは報告しています。
研究チームを率いたディアズ教授は「回避すべきは、長時間座り続けること。たとえ数分の簡単なストレッチでも、30分ごとにこまめに取り入れれば、十分に効果がある」と語っています。
ちなみに、WHOが推奨している成人に必要運動量は、週に150分の軽い有酸素運動(1回あたり10分以上連続すること)と、75分以上の中負荷運動。しかし、2016年のWHO調査では、日本人の40%がこの推奨水準を満たしておらず、残念ながら世界水準の31%を大きく上回る水準で「運動不足状態」であることが分かっています。
そして、コロナを契機に進む自宅待機・在宅勤務シフトにより、私たちが座り続ける時間は2016年時点よりも、明らかに格段に増えていることでしょう。世界の科学者たちも、今回のパンデミックにより広がる「Global Inactivity」の将来リスクに、強い警鐘を鳴らし始めています。
こういう時だからこそ、「座りすぎのリスク」について正確な情報リテラシーを持ち、オンラインミーティング続きやPCとの睨めっこから離れ、30分に一度は伸びをしたり、軽い運動でリフレッシュしたりする。そんな余裕のある新生活スタイルを構築したいものです。
出典
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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