介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的施設のことです。
介護保険施設には、以下の3種類があります。
介護保険施設3種類のそれぞれの特徴をみていきましょう。
いずれも公的な介護保険施設なので、一時入居金は不要、月額利用料も大きな差はありません。
入居条件については、要介護の方が対象ですが、特養のみ原則として要介護3以上とされています。
介護保険施設3種類の最も大きな違いは「どんなケアに重点がおかれているのか?」ということです。特養は介護ケア、老健はリハビリ、介護医療院は医療ケアというそれぞれの役割に特化させることで、入居者が必要とするサービスを充実させ、それに必要な人員体制が整えられています。
施設の種類 | 入居条件 | 月額利用料 加算等含む |
認知症 受け入れ |
介護ケア | 医療ケア | リハビリ |
特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上 | 10万〜14.4万円 | ○ | ◎ | △ | ○ |
介護老人保健施設(老健) | 要介護1〜5 | 8.8万〜15.1万円 | ○ | ○ | ○ | ◎ |
介護医療院 | 要介護1〜5 | 8.6万〜15.5万円 | ○ | ○ | ◎ | ○ |
※費用は従来型個室を使用する場合。自己負担割合1割、1単位=10円で算出。
※利用料下限は低所得者向け制度利用なども含む
※月額利用料は30日換算で算出。
※日常生活費(10,000円と仮定)、食費、居住費等を含む。
介護保険施設の入所対象となる条件は、以下の2つです。
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また40〜64歳の第2号被保険者の方で、特定疾病による要介護認定を受けた方も入所可能です。
公的な施設である特養は、費用が安く充実した介護を受けられることから人気の施設です。原則として、要介護度3以上の方が入居可能です。一度入居すれば、終身利用が可能であることも特徴です。
介護ケアに重点が置かれているため24時間体制で手厚い介護サポートを受けられますが、日常的に高度な医療ケアが必要な場合は入居できないことがあります。
個室は1人当たりの居室床面積が10.65㎡以上
いわゆる「3:1」と言われる、入居者3人に対して、介護・看護職員を最低1人配置する人員体制が基本。
施設長、医師(非常勤)、看護師または介護職員(入居者3名に対して1名)、生活相談員、栄養士、機能訓練指導員、介護支援専門員など
介護老人保健施設(老健)は、介護が必要な高齢者がリハビリに取り組み、家庭への復帰を目指し、自立したした生活ができるように支援する施設です。病院から退院してすぐ自宅に戻るのが不安な時などに利用され、あくまでも目的はリハビリです。
リハビリ指導を行うための人員体制が整っていることが特徴で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかの資格を持つ人を1人以上配置することが法律で定められています。
老健はリハビリ期間のみの入居ということもあり、多床室がメインとなっています。1人当たりの居室床面積は8㎡以上。
医師(常勤)、看護師または介護職員(入居者3名に対して1名)、機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)、支援相談員。必要数に応じて、栄養士、薬剤師など。
介護医療院は、医療ケアが充実していることが特徴で、医療面での人員が充実しており、施設内には診察室や療養室、機能訓練室などの設置が義務付けられています。医療と介護を備えた住まいであることを目的とし、2種類のタイプがあります。
主に多床室型。仕切りによってプライベートが確保され、1人当たりの居室床面積が8㎡以上。
医師(常勤)、看護師(入居者6名に対して1名)、介護職員(入居者5〜6名に対して1名)、薬剤師、支援相談員、栄養士。必要数に応じて、機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)。
前述した公的介護保険施設と、民間企業の運営による民間施設にはどのような違いがあるのでしょうか。
民間の入居型介護施設も様々な種類があり、介護保険制度適用のものもあります。公的施設を申し込んでも入居待ちとなった際は、民間の介護施設の検討も視野に入れてみましょう。
施設の種類 | 月額費用 (目安) |
施設概要 |
介護付き有料老人ホーム | 15~30万円 | 高齢者に必要な介護サービスを、充実した設備と人員体制で提供する施設 |
住宅型有料老人ホーム | 15~30万円 | 要介護度が低く、比較的自立した高齢者向けの施設 |
グループホーム | 15~20万円 | 認知症の方を対象とし、少人数で共同生活を送る施設 |
サービス付き高齢者住宅(サ高住) | 10~30万円 | 要介護度が低い高齢者を対象にしたバリアフリー住宅 |
健康型有料老人ホーム | 10~40万円 | 自立した生活を送ることができ、本格的な介護の必要が無い高齢者を対象とした施設 |
シニア向け分譲マンション | 10~30万円 | バリアフリー化された分譲住宅 |
※月額費用と別に入居一時金などが別途かかったり、月額費用に分割上乗せする方式など、施設によって様々なため、費用については必ず確認しましょう。
公的施設は国などの補助もあり利用料金が民間よりも安く設定されています。
民間施設の運営は民間企業のため、公的施設よりも当然費用は高くなります。しかし、その分、公的施設にはないサービスや施設が充実しており、入居者のニーズに合う施設を選ぶことができます。
公的施設の場合は、要介護認定1〜5の方(特養は要介護3以上が基本)が対象となっており、健康な高齢者は入所をすることができません。
民間施設はホームのタイプにもよりますが、自立・要支援・要介護の方まで対象にしている施設もあり、入居者にとっては選択の幅が広くなっています。
入所条件と同様に、公的施設の方が入所難易度も高く厳しいとされています。
公的施設は費用が安いことから希望者が多く、入居申請を出してすぐには決まることは稀です。特養など人気の施設の場合は、1年以上待つこともあります。
一方で、民間施設は施設数が多く、入居条件の幅が広いということもあり、比較的入居がしやすくなっています。
公的施設と民間施設のメリットとデメリットを比較検討してみましょう。
メリット
公的施設 | 民間施設 |
・入居一時金がなく、月額費用が安い ・低所得者でも入居相談が可能 ・終身利用が可能(特養) ・リハビリが充実している |
・入居しやすい ・レクリエーションやイベントが豊富 ・細やかなサービス提供(設備・人員体制) ・自立〜終身まで選択肢が広い |
デメリット
公的施設 | 民間施設 |
・入居待ちが多く、入居できる時期がわからない ・プライベートの確保が難しい場合がある ・入居退去条件が厳しい |
・初期費用や月額費用が高い ・介護度が高くなると、入居が難しくなったり施設の移動などを求められることがある |
介護保険施設は、費用が安く手厚い介護サービスが受けられるため、介護を必要とされる方に人気も高く、入居待ちになるケースが多々あります。
介護保険施設にこだわるあまり、入居待ちの間に支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が多くの負担を背負わないためにも、民間施設の検討を視野に入れてみることも大切です。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。