要介護1の一人暮らしはできる?生活を支える介護サービスと、知っておきたいリスク

要介護1の一人暮らしはできる?生活を支える介護サービスと、知っておきたいリスク

要介護認定で「要介護1」となった方は、一人暮らしをすることは可能なのでしょうか?離れて暮らすご家族にとっても心配が尽きないことと思います。

本記事では、要介護1の人が一人暮らしをする際に必要な介護サービスや費用、考えられるリスクのほか、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が気をつけておきたいことなどを解説していきます。

要介護1とは? 

要介護1は「食事やトイレなど基本的なことはできるが、生活の中で一部介護が必要」な状態です。

具体的には、以下のような状態が挙げられます。

・トイレや入浴時に、部分的に手伝いが必要
・立ち上がる際や歩行が不安定なため、一部介助が必要
・理解力の低下、問題行動が見られる

要介護の段階の中では、最も介護の必要性が低い段階です。

 

要介護1で一人暮らしはできる? 

離れて暮らす親が要介護1と認定された場合、本当に一人暮らしができるのか不安に思う方も多いかと思います。しかし、要介護1の認定を受けていても、介護保険サービスを利用することで、一人暮らしは可能です。

要介護1は基本的な日常生活は自分一人で行えるため、全面的に介助が必要というわけではありません。介護保険サービスを利用し、一部介助をしてもらえば、一人暮らしもできる段階です。

 

どのくらいの人が要介護1で一人暮らしをしているの? 

実際に、要介護1で一人暮らしをしている方はどれくらいいるのか、見ていきましょう。

下記のグラフをご覧ください。

<要介護1で一人暮らしをしている人の割合>

*出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査

<要介護別でみる一人暮らし世帯の割合>

*出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査

要介護1の認定を受けている人の中で、一人暮らしをしている単独世帯は29.1%と、約3人に1人が一人暮らしをしていることが分かります。

介護度別でみた場合は、要介護1の方が一人暮らしをしている割合は29.14%となっています。

要介護1の認定を受けたからといってすぐに施設に入る必要がある、というわけではないということです。

 

要介護1の一人暮らしで利用できる介護保険サービス

要介護1以上の方は、介護保険サービスを利用できます。介護保険サービスには「居宅型」と「施設型」があります。

自宅に居ながら介護サービスを利用したい方向けの介護保険サービスは、居宅型サービスです。居宅型サービスには「訪問型」「通所型」「短期入所方」と3種類あります。具体的にサービス内容をチェックしてみましょう。

訪問型 

訪問型サービスは、訪問介護士(ホームヘルパー)などが、利用者の自宅を訪問し行う介護サービスのことです。

下記の6種類があります。

訪問介護(ホームヘルプサービス) ホームヘルパーが、身体介護(食事、入浴等)や生活支援(家事代行)を行う。
訪問入浴介護 ホームヘルパー、看護師が移動式浴槽を持って自宅を訪問し、入浴の介助を行う。
訪問介護 看護師などがかかりつけ医の指示に基づき、療養上の世話や診療の補助を行う。痰吸引やインスリン注射などの医療行為を行うこともある。
訪問リハビリテーション 理学療法士などのリハビリ専門職が、日常生活の自立に向けたリハビリを行う。
夜間対応型訪問介護 ホームヘルパーが夜間帯に訪問し、「定期巡回」(安否確認や排泄の介助など)、または「随時対応」(急な体調不要の際に訪問介護塩呼び介助を受ける)を行う。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ホームヘルパーや看護師が、利用者の希望する時間に24時間365日対応する訪問介護・介護サービス。

短期入所型

施設に短期で入所できる短期入所型サービスは、以下の2種類です。

短期入所生活介護(ショートステイ) 特別養護老人ホームなどに短時間宿泊し、介護スタッフ、食事や入浴などの日常生活上の援助、機能訓練、レクリエーションやリバビリなどが受けられる。
短期入所療養介護(ショートステイ) 医師や看護師の他、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門のスタッフにより、通常の介護サービスのほか、医療的ケア、看護、機能訓練など様々なサービスが受けられる。

通所型

通所型サービスとは、いわゆるデイサービスやデイケアのことです。要介護1の方が利用できる通所型サービスは、以下の5種類です。

通所介護(デイサービス) 介護施設に行き、日常生活の介護(利用者が自宅で自立した日常生活を送るための支援)を受けられる。
通所リハビリテーション(デイケア) 病院や介護老人保険施設に行き、リハビリなどの医療的ケア(身体機能、日常生活の回復)を受けられる。
認知症対応型通所介護 認知症の方が対象。食事、入浴などの日常的な介護、機能訓練を受けられる。
地域密着型通所介護 地域に密着した小規模な施設などで、入浴や食事などの介護や機能訓練などを受けられる。
療養通所介護 難病、認知症などの重度要介護者の方や、がん末期患者の方など常に看護師による医療ケアが必要な方が、日常生活上の世話や、介護などを受けられる。

福祉用具のレンタル利用

要介護1の方は、以下の福祉用具のレンタルが可能です。

介護保険サービスと同様に、介護保険の支給金を利用すれば自己負担1~3割でレンタルができます。

・手すり
・スロープ(工事不要の製品のみ)
・歩行器
・歩行補助杖(多点杖や松葉杖など)

関連記事:福祉用具とは?介護保険でのレンタルや購入補助制度について

 

自宅のリフォームが必要な時は介護保険を利用

要介護者が一人暮らしをする場合は、日常生活の不便を軽減し、安心して暮らすための設備や器具の設置、段差をなくすなどの自宅のリフォームを検討する方が増えて来ます。

介護が受けやすいように自宅をバリアフリーにする際にも、介護保険を利用できます。「住宅改修費」という補助金があり、バリアフリー化するためのリフォーム代として使えます。

補助金の上限は20万円です。毎月の介護保険の支給限度額には含まれないため、毎月の支給限度額とは別で、リフォーム代20万円が補助されるということです。ただし、「要介護者1人につき一度の利用のみ」であることに注意しましょう。

 

要介護1の一人暮らしで考えられるリスク 

基本的な日常生活を一人で送ることができるとはいえ、要介護1の方の一人暮らしには、様々な不安があるかと思います。あらかじめ、一人暮らしのリスクやデメリットについても確認しておきましょう。

認知機能低下や病気の気づきに遅れる

一人暮らしの場合、認知症の症状が出ても、それにすぐに気づく人が周りにいません。そのため、認知症の発見が遅れてしまう可能性があります。

気づかぬうちに症状が進行し、徘徊や近隣トラブルなど問題行動を起こす場合もあります。

日常生活(家事など)がうまくいかなくなる 

特に、今まではご家族と生活していて急に一人暮らしをはじめた方は、家事などに慣れておらず、日常生活に問題が出る場合があります。自炊に慣れていないと栄養バランスが偏り体調を崩すこともあります。

火の始末を忘れたり、ゴミの分別がうまくできず生活に支障が出たりなど、日常生活をスムーズに送ることが難しくなる可能性もあります。

災害時や緊急時の対応が遅れる

地震や台風、火事などの時に、すぐに避難できない可能性があります。避難の際の転倒や、逃げ遅れてしまうことも考えられます。

孤独感から生きがいが失われる

ご家族や他人との会話やコミュニケーションが少なくなることで、孤独感や寂しさを感じやすくなります。

友人や地域の方など周囲との交流がなく、日常的に話し相手がいない方の場合は特に、日々の楽しみが減り生きがいを感じにくくなるという可能性もあります。

 

要介護1の一人暮らし支援者が気をつけておくこと

一人暮らしをする要介護1の方のために、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)はどのような支援ができるのでしょうか。

介護保険外の自費サービスを利用

介護保険サービス内では受けられないサービスが受けられるのが、介護保険外サービスです。

訪問理容師、外出付き添い、宅食など様々なサービスがあります。生活をより豊かにする支援が多いため、利用を検討してみるのもよいでしょう。

遠方から見守れるサービスを活用

ご家族が遠方に住んでいる場合は、遠距離からでも見守れるデバイスを活用するのがおすすめです。様々な業者や機器による見守りサービスがあるため、一人暮らしを始める前に検討しておきましょう。

関連記事:高齢者の「見守りサービス」とは?目的や状況に合わせた選び方について解説

一人暮らしをやめるタイミング

支援者(介護家族・ビジネスケアラー)がいない時に、ケガや病気などの発作が起きてしまったときは、一人暮らしを続けるのは難しいと言えます。

身体的な危険を感じたら一人暮らしをやめて、施設への入所などを検討しましょう。

 

まとめ

要介護1でも、居宅型サービスなどを利用すれば一人暮らしはできるということがわかりました。

自宅で生活ができることは大きなメリットですが、その反面、リスクやデメリットもあります。一人暮らしのメリット、デメリット両方を確認した上で、安全で楽しい生活を送るための方法を検討していきましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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