一人暮らしの親が認知症になったらどうするべき?起こり得るリスクと対策・対処法を解説

一人暮らしの親が認知症になったらどうするべき?起こり得るリスクと対策・対処法を解説

少子高齢化が進む現在、一人暮らしをされている高齢者は増加傾向にあり、親御さんと離れて暮らしている方にとっては、認知症や事故、病気などの心配事も多いのではないでしょうか?

認知症になった場合は、ご本人の安全面にリスクがあるだけでなく、ご家族の負担も増えていくため、できるだけ早めの対策が必要です。

今回の記事では、そんな認知症の高齢者の一人暮らしに焦点を当て、どんなリスクやトラブルがあるのか、どんな対策や対処をしていくといいのかを解説していきます。

認知症の一人暮らしにおけるリスク

一人で家事をする高齢の男性

認知症を患う高齢者の方でも、実際に一人暮らしをされている方はいらっしゃいます。「様々なサポートを活用すれば不可能ではない」とされている認知症の一人暮らしですが、健康面・安全面でのリスクがあることや、思わぬ事故やトラブルが起こることも知っておきましょう。

火の不始末

もの忘れや注意力低下から起こる最も怖いリスクは、火の不始末が原因となる火災です。台所のコンロや暖房器具、タバコ、仏壇のお線香やろうそくの不始末など、認知症では起こり得ることです。

火災となればご本人の安全面の危機だけでなく、ご近所への被害も発生するため、最大限の注意が必要です。

温度センサー付きや安全装置のあるコンロ、火を使わない機器への変更などの対策を考えてみましょう。

外出時の事故・行方不明

認知症の症状のひとつに「見当識障害」という症状があります。時間や場所の感覚が薄れる症状であるため、見当識障害のある方は、たとえ見知った土地でも道に迷うことがあります。

認知症の症状である「徘徊」においても、行方不明になる危険性が高くなります。

そのほか、外出時は、体力の低下や危険察知の遅れから信号や踏切での事故、転倒や怪我など、多くのリスクを伴います。

金銭トラブル

認知症により、管理能力や判断力が低下すると、お金の管理が難しくなりがちです。同じものをいくつも買ってしまったり不要な高額商品を買ってしまうといった買い物でのトラブル、ATMでお金が引き出せなくなったり、月額支払いの滞納・未納、年金・貯金の管理ができなくなるケースも見られます。更には、高齢者を狙った詐欺に合うことも、近年よくあるトラブルとされています。

食生活の偏り・低栄養

特に一人暮らしの場合、買い物へ出かけたり料理することも億劫になりがちです。そのため、同じものを食べ続けたり、食事を忘れてしまったり、栄養バランスの悪い食生活となり、低栄養をもたらす可能性が高まります。低栄養になると、健康状態が低下したり、認知症の悪化を招くことになってしまいす。

また、認知症の影響で、食品の状態や料理工程が分からなくなり、腐ったものを食べてしまったり加熱が必要なものを生で食べてしまったりする危険性も生じます。

服薬や病気の管理

認知症では、薬の服薬管理ができなくなることも、注意すべきリスクに挙げられます。具体的には、服用を忘れたり、過剰に服用してしまう、などです。

特に持病で糖尿病や心臓病などの疾患がある方や高血圧薬を常飲されている方は、薬の飲み忘れや過剰な服薬によって、低血糖障害・意識障害などといった命の危険にも繋がります。

トイレのトラブル

認知症による認知機能障害や見当識障害により、排泄の失敗が起こることもあります。例えば、粗相をしてしまったり、汚れた下着を触ったり隠したり、不衛生な行動をとってしまうことも。

排泄のトラブルは、ご本人の尊厳を守るためにも、周囲のサポート体制を整える対策が必要不可欠です。

ご近所とのトラブル

認知症の症状により、ゴミの管理ができなくなることにも要注意です。ゴミの分別ができない、ゴミ出しの曜日が違う、ゴミを溜め込んでしまいゴミ屋敷になるなどの事例は、ご近所とのトラブルに発展しがちです。

また、物盗られ妄想や被害妄想などが生じ、ご近所さんを疑ってしまい関係が悪化するケースもあります。

一人暮らしを続けるにあたり、ご近所や地域の理解やサポートが得られるよう、トラブルが起こる前に状況を説明しておくなどの対策をとっておきましょう。

 

認知症になった後にすべき対策・対処

パズルを行う高齢者の手元

離れて暮らす親御さんが認知症になった場合は、どのような対策・対処をとるといいのでしょうか?特に、認知症の方が一人暮らしをしている場合は、前述したような数々のリスクがありますが、コミュニケーションが円滑に行えないこともあり、実際にどのように生活しているのか、分かりにくいという問題があります。とはいえ、24時間見守ることや家族だけで支えることは難しいのが現状です。

まずは、ご本人の状態をよく理解し、健康面、安全面を考慮しながら複数人でサポートを行う体制を整えていきましょう。

認知度の確認と正しい知識を得る

ご家族の方が認知症の理解を深めることが、対策への第一歩となります。

ご本人の認知症の進行レベルや、どんな症状が出ているのかをしっかりと把握しておきましょう。認知症のレベルが同じでも、症状の出かたやどんな行動に繋がるかは、個人差があります。医師の診断を受け、分からないことは専門家に相談を。

認知症のレベルや症状を知ることによって、今後どのような介護サービスを利用すべきか、どのような家族のサポートが必要か、介護ケアの方向性が明確になります。

また、認知症のレベルが深刻化する前に、ご家族の方が資産の把握・管理が行える手続きも必要です。口座凍結という最悪の事態になる前に、早めの対処を心がけてください。

介護のキーパーソンを決め役割分担を

認知症の介護を、ひとりが抱え込むことには限界があります。特定のひとりに介護負担がかかりすぎないよう、複数人でチームを組み、介護をシェアすることが大切です。

支援者(介護家族・ビジネスケアラー)、ご近所の方、友人や親戚、ヘルパーなどのチームでサポートを行う場合、中心となるキーパーソンを決め、各々の役割分担や頻度・順番を決めていくといいでしょう。

中心となる方は、自らの手を動かさなくても円滑に介護が行える環境を整えることがポイントです。危険やリスクの少ない住まいの環境づくりやケアマネジャーとの相談役、介護サービスの調整役など、サポート体制全体を管理する役割を担いましょう。

ひとりの人間にかかる介護負担を軽減することが、より良い介護環境づくりの継続に繋がります。

各種在宅支援サービスの利用

要介護認定を受けていれば、一人暮らしの認知症の方も多くの介護保険サービスを利用することができます。

介護保険の通所サービス(デイサービス)や訪問サービス(訪問介護・訪問看護など)をうまく活用し、一人暮らしの方の生活支援や医療ケアを受けながら、一人になる時間を軽減していきましょう。

また、認知症の方などを対象に、定期的な訪問や日常生活の金銭管理を行ってくれる「日常生活自立支援事業」も認知症の一人暮らしには心強いサービスです。

介護保険サービスは、自己負担額を軽減できることも大きなメリットです。

介護保険サービス以外の、民間企業による見守りサービスや宅食サービス、家事代行サービス、自治体による支援サービスなども有効に活用を。

家族だけで抱え込まず、外部のサービスを併用しながら、安心して暮らせるサポート体制を整えていきましょう。

 

認知症の一人暮らしの限界は?

様々なサービスを使った対策をとりながら認知症の方の一人暮らしをサポートしていても、リスクやトラブルがゼロになるわけではありません。

一人暮らしの限界は、それぞれのご家庭の事情で異なりますが、状況によっては施設へ入居する選択肢も視野に入れておくことが必要です。

施設入居を検討する目安として以下のような場合が挙げられます。

  • 問題が後を絶たない
  • ひとりで生活を送ることが困難で、本人の尊厳や健康面・安全面が守れなくなってきた
  • 支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の介護疲れが限界にきている

限界がくる前に、早め早めの段階でご家族同士で話し合い、入居のタイミングについて具体的に「これができなくなったら」「こんな事が起きたら」といった指標を、あらかじめ決めておくといいでしょう。

 

まとめ

認知症の一人暮らしは、不可能ではありませんが、さまざまなリスクを伴います。まずは認知症のレベルや状態を把握し、介護認定を受けた上で必要となる介護サービスを活用しながら、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)がひとりで介護を抱え込まないサポート体制を整えていくことが重要です。

また、実は認知症になっても一人暮らしを実現されているご家族のケースも見受けられます。ケアマネジャーや地域包括支援センター、かかりつけ医への相談をしながら、ご本人が安全に暮らすための対策を打つことができるのです。

「対処法が分かっていれば認知症は怖くない」という考え方を持ちながら、ご本人とご家族の状況を加味しながら、専門職と連携したサポート体制を築いていきましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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