子どもの「非認知能力」は、50年後の脳の「認知能力」を左右する

子どもの「非認知能力」は、50年後の脳の「認知能力」を左右する

「前向きなエネルギーがある」「活動的」「落ち着いている」「自制心がある」──。

子育てをしている親なら、子どもにはそんな風に育ってほしい・・・と一度は思うものだと思います。

教育業界でも最近、「非認知能力」=自分の感情をコントロールできる力や、前向きにやり抜く力をはぐくむことが大事であると、強く提唱され始めています。

 では、そんな子供達の非認知能力に関わる「特性」が、彼らが70歳になったときの脳の健康、つまり、認知症発症リスクに直結するとしたら──。

今日は、米国ロチェスター大学が昨年10月に発表した、高校生時点の「パーソナリティ」と老後における認知症発症リスクを分析した、最新の研究結果をご紹介したいと思います。

 まず、研究者たちは1960年に米国で全国的に行われた、「PROJECT TALENT」という高校生82000名(平均年齢16歳)に対する10のパーソナリティテストのデータを入手。 彼らのその後数十年にわたる医療データと突き合せたところ、そのうちの2543名に、平均70歳時点で認知症の症状が出ていることが判明しました。

このデータとパーソナリティテストの結果を研究者たちが分析した結果、以下のような関係性が明らかになりました。

  • 高校生のとき「快活(エネルギーレベルが高い)」「活動的(身体活動量の高さ」と判定された生徒は、高齢者になったときの認知症発症リスクが相対的に低い
  • 高校生のとき「落ち着いている」「成熟している」と判定された生徒も、高齢者になったときの認知症発症リスクが相対的に低い
  • 高校生時点での「社会性」「社交性」「リーダーシップ」については、認知症発症リスクとの関係性は認められない

なお、社会的経済的ステータスの「パーソナリティ」への影響についても調査したところ、「快活」「活動的」に対する社会的・経済的ステータスの影響はほとんど見られなかったものの、「落ち着いている」「成熟している」という項目については、社会的・経済的ステータスが高いほど強い傾向にあったそうです。

「経済的社会的に苦しい立場に置かれると、生来もっている<落ち着き>や<成熟性>を、相殺されてしまう傾向があるのかもしれない」と研究者たちは語っています。

 「明るく元気で活動的」「どんな環境でも、落ち着いて前向きに向きあえる」。結局、そんな風に人が自分らしく、心健やかでいられると、脳も長きにわたり健やかでいられるということだと、この結果は示唆しています。

<自分の心を健やかに保つ力>を育むことは、変化の時代に子供達が生き抜いていくためにきわめて重要と言われていますが、超高齢社会を迎える社会が健やかでいるためにも、まさに必須の力なのかもしれません。

出典 : Certain personality traits in high school may lower dementia risk five decades later

この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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