小規模多機能型居宅介護はずっと泊まりができる?30日ルールについて解説

小規模多機能型居宅介護はずっと泊まりができる?30日ルールについて解説

小規模多機能型居宅介護では、通い・訪問・宿泊の3つのサービスを組み合わせて利用することができる便利なサービスですが、契約前に具体的な利用条件について気になる方も多いことでしょう。特に、ずっと泊まりが可能なのかどうかは注意したいポイントのひとつです。

結論からお伝えすると、基本的に、小規模多機能型居宅介護は「在宅介護支援」を目的とした施設であり、主に一時的な宿泊を提供しているため、ずっと泊まりでの利用は想定されておりません。しかし、やむを得ない理由など、イレギュラーな諸条件があてはまる場合は、一定期間宿泊できる場合があります。

今回の記事では、小規模多機能型居宅介護を安心して利用するために30日間ルールと呼ばれる規定について解説していきます。

 

小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護は、ひとつの介護事業者が通い・訪問・宿泊の3つのサービスを提供する、地域密着型のサービスです。1つの事業所と契約するだけで、デイサービスやショートステイ、訪問介護などを利用できるため、高齢者や身体の不自由な方々が安心して自分らしい暮らしを続けるためのサービスとして注目されています。日常生活の援助や医療的ケア、リハビリテーションなど、幅広いサポートが用意されており、食事の提供や入浴の手伝い、医師の診察など、利用者のニーズに合わせてサービスを利用することができます。

利用の対象者は、介護認定を受けている方です。また、地域密着型サービスであるため、事業所の所在地と同じ住民票を持つ方々に限られており、住まいの近くにある小規模な施設で介護サービスが提供されます。

小規模多機能型居宅介護は、24時間365日、回数の制限なく利用でき、費用は月額定額制で1ヶ月にかかる基本料金は要介護度や自己負担割合によって異なります。

なお、定額内で必要とするサービスを組み合わせて利用することが可能ですが、宿泊費や食費、おむつ代などが別途かかります。その他にも加算費用が追加されることがありますが、具体的な料金については、施設によって異なるため、事前に確認することが大切です。

 

小規模多機能型居宅介護はずっと泊まりが可能?

笑顔の高齢者女性と介護士の女性(訪問介護・在宅介護)

小規模多機能型居宅介護では、ずっと泊まりが可能なのでしょうか?
実際に、ずっと泊まりでの入所ができる場合もありますが、本来の目的とは異なるため利用するには条件があります

ずっと泊まりで利用する条件

基本的に、小規模多機能型居宅介護は「在宅介護支援」を目的とした施設です。そのため、ずっと泊まりでの利用は想定されておらず、主に一時的な宿泊や泊まりを提供しています。

しかし、「出張などのやむを得ない都合で、一定期間だけ宿泊サービスを利用したい」「老人ホームが見つかるまでの期間、宿泊サービスを希望したい」「看取りの段階に入り、ずっと宿泊してのケアが必要」といった状況では、ずっと泊まりで入居することが認められることもあります。ただし、原則としては数泊程度の宿泊を想定しているため、長期滞在の場合は、施設の運営推進会議で報告・検討され、承認が必要となります

つまり、小規模多機能型居宅介護においてずっと泊まるということは基本的には難しいということです。

将来的に小規模多機能型居宅介護を検討している方が「長期宿泊」を目的として選択肢に入れることはおすすめできません。施設によっては認めていない場合や一定期間で自宅に戻らなくてはならない場合もあるので、施設の担当者と相談して、適切な解決策を見つけるようにしましょう。

 

ずっと泊まりで利用する時の費用

小規模多機能型居宅介護の料金は月額定額制です。ずっと泊まりで利用する場合でも月額の利用料は変わりません。ただし、基本料金に加えて日常生活費(食費、宿泊費、おむつ代、施設の備品利用費用など)は実費で別途負担する必要があります。また施設や地域、利用するサービスなどによってその金額は異なります。

自己負担料金の目安として、食費は1回につき約300円〜800円程度、宿泊費は1泊約2,000円〜5,000円程度に設定されている場合が多いようです。長期で利用する場合は別途加算費用がかかることを心得ておきましょう。
食費や宿泊費などの料金は施設によって異なりますので、事前に確認をしておいてください。

 

ずっと泊まりで利用する時の注意点「30日ルール」について

悩む日本人夫婦

小規模多機能型居宅介護には、訪問診療を必要としている方に対し、「30日ルール」というルールがあります。状況によっては、宿泊中に訪問診療を受けられないケースが生じ、一旦自宅へ戻らなくてはならないため、しっかりと把握しておきましょう。

 

30日ルールとは?

小規模多機能型居宅介護を利用している方で、宿泊中に訪問診療を受ける必要が生じた場合「30日ルール」と呼ばれる規制が適用されます。30日ルールとは、宿泊中に訪問診療を受けるために設定されている規定のことで、小規模多機能型居宅介護の宿泊日数に関する規則ではありません

具体的には、小規模多機能型居宅介護の宿泊中に訪問診療を受けることができますが、宿泊サービスを利用し始める日から遡って30日以内に、訪問診療を自宅で受けておかなくてはなりません。

 

例:仮に5/1からずっと宿泊サービスを利用し、5/10に訪問診療を受ける場合

4/10〜4/30までに自宅で訪問診療サービスを受けている → 受けることが可能
4/10〜4/30までに自宅で訪問診療サービスを受けていない → 受けることができない

したがって、訪問診療を必要としている方がサービスを利用する前の30日以内に訪問診療を受けていない場合は、一旦自宅に戻り、自宅で訪問診療を受ける必要があります。自宅での訪問診療後は、小規模多機能型居宅介護へ戻って宿泊サービスの利用を続けることができます。

この規則は、訪問診療医が利用者の健康状態や医療ニーズを事前に確認することで、利用者が安全で適切な訪問診療を受けられるように設けられています。

 

退院直後は30日ルールが例外に

​​かつては、30日ルールは退院後にも適用され、「病院」から「自宅で訪問診療」その後に「宿泊サービスの利用」という手順を踏む必要がありました。
しかし、令和2年度の診療報酬改定により、病院退院直後は30日ルールの適用がなくなり、医療機関の退院日から宿泊サービスを利用開始した場合、サービス利用開始前30日以内に自宅で訪問診療を受けていなくても、宿泊サービス利用時に訪問診療を受けることができるようになりました。

これにより、病院退院後も直接宿泊サービスを利用できるようになり、施設を利用する方にとっての手間と負担が軽減されました。

 

ショートステイと異なる30日ルール

特養や介護施設に一時的に入居する「ショートステイ」という宿泊サービスにも、30日ルールが存在しますが、これは小規模多機能型居宅介護のルールとは異なるということを理解しておきましょう。

ショートステイの30日ルールは、利用期間の制限です。要介護度に応じて、連続で利用できる日数が制限されており、連続で宿泊できる日数は最大でも30日間と定められています。また、要介護度に応じた介護認定期間の半数以上は泊まることができません。

 

まとめ

  • 小規模多機能型居宅介護をずっと泊まりで利用することは可能だが、基本的に数泊程度の宿泊を想定しているため、やむを得ない理由がない限り承認されにくい
  • 月額の基本料金に加えて食費、宿泊費、おむつ代などは別途負担する必要があり、ずっと泊まりで利用すると負担が大きくなる
  • 宿泊中に訪問診療を必要とする場合、「30日ルール」の規制が適応されるため注意が必要

小規模多機能型居宅介護に設けられた「30日ルール」は宿泊中の訪問診療の受診に関する規則です。
これにより、宿泊サービス利用前の30日以内に自宅で訪問診療を受けていない方は、施設での訪問診療は受けられないため、一旦自宅へ戻って訪問診療を受けることになります。もしも長期利用が必要となった場合に備え、事前に受診しておくよう注意しておきましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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