グループホームは「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれ、要支援2以上の認知症がある高齢者の方を対象とした小規模な介護施設です。利用者の自立支援を重視し、家庭的な雰囲気の中で地域密着型のサービスを提供しています。
5~9人を定員とした「ユニット」と呼ばれる、複数の居室と台所・食堂など共有スペースで構成された場所で共同生活を送り、スタッフが24時間体制で配置されています。
グループホームには、厚生労働省により規定された人員配置基準があり、代表者、管理者、計画作成担当者、介護職員がそれぞれ必要数配置され、施設の運営やサービスの提供をしています。
グループホーム全体を管理するのは、代表者の役割です。事業所の代表者になるには、介護施設で認知症高齢者の介護に従事した経験があること、または保険・医療・福祉サービスの提供を行う事業所の経営に携わった経験があること、専門知識を持っていることが求められます。
また、厚生労働省が定める「認知症対応型サービス事業開設者研修を修了している」ことも必要条件とされています。
グループホームでは、ユニットごとに1人常勤の管理者が配置されます。管理者になるには、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで認知症介護に従事した経験が3年以上あり、厚生労働省が定める「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了していることが求められます。
役割としては、スタッフの人事・労務管理・経営・収支管理・運営管理など、様々な業務を担当します。現場にも出向くことがあるため、介護の知識や介護現場経験が必要です。
なお、管理者は事業所の管理に支障をきたさなければ、他の職種との兼任も認められています。
介護職員は、利用者への生活援助や身体介助、リハビリテーション、レクリエーションなどの提供を担当します。
グループホームでは、利用者3人に対して介護職員を1人以上配置することが、人員配置基準で定められています。また、複数の介護職員が在籍している場合、1人以上が常勤である必要があります。入居者の見守りは深夜でも必要となるので、介護職員は24時間常駐しています。
ただし、日中と夜間ではスタッフの配置が異なるため、24時間「3:1」以上の比率でスタッフが確保されているわけではありません。また、複数のユニットがある施設では、ユニットごとに専用の介護職員が配置されます。
計画作成担当者は、利用者の心身の状態に応じたケアプランを作成するスタッフであり、グループホーム内におけるケアマネジャー(介護支援専門員)の役割を担っています。ユニットごとに最低1人の配置が必要とされています。
このポジションに配置されるには、特定の要件を満たす必要があり、具体的には、「認知症介護実践者研修を修了していること」と「専らその職務に従事する者であること」などが挙げられます。
また、計画作成担当者の中で1人以上はケアマネジャーの資格を保有していることが必要条件とされています。
厚生労働省が定める「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」によれば、グループホームではユニット(共同生活住居)ごとに介護職員を配置し、日中の時間帯は利用者3人に対し介護職員1人の割合で配置することが求められます。夜間及び深夜の時間帯にも介護職員を1人以上配置する必要があります。
また、グループホームの運営基準に対する解釈通知によれば、日中・夜間・深夜の時間帯は事業所ごとの生活サイクルに応じて設定されるべきで、日中の時間帯には介護職員の出勤時間の合計が24時間以上になり、常に介護職員が1人以上確保されていることが求められます。
ただし、実際には、日中の提供できる時間が利用者の時間に対して不足してしまうため、多くの施設は「入居者3:職員1」という基準には達していないのが現状です。
例えば、1ユニット9人のグループホームに介護職員4人を配置し、日中(6時~21時)の勤務時間合計が25時間になるように設定した場合、入居者9人×15時間=135時間の生活時間に対し、介護職員が入居者に関われる時間は18.5%(25時間÷135時間)となり、1ユニット9人の場合、日中はほぼ「9:2」となります。
グループホームには人員配置基準が定められていますが、入居施設を選ぶ前には、以下のような注意点も理解しておきましょう。
グループホームでは、利用者と職員が「3:1」になるような人員配置が基準として設けられていますが、24時間体制で常時人員が確保されているわけではありません。
この「3:1」の基準は日中のみ適用され、夜間および深夜の介護職員の配置は1人以上で良いとされています。また、日中でも常勤の介護や看護職員の数ではなく、利用者の総数に対して働いている時間数をもとに「3:1」という比率が計算されます。そのため、時間帯に常勤の介護や看護職員の数ではなく、利用者の総数に対して働いている時間数をもとに計算された比率です。時間帯によっては介護職員が不足することもあります。
グループホームの人員配置基準では、すべての介護職員が常勤である必要はありません。常勤の介護職員が1人いる場合は、パートやアルバイトなど非常勤の職員を起用することが認められており、実際に常勤の介護職員とパートタイマーとを組み合わせている施設もあります。
例えば、入浴や食事など、特に人員が多く必要な時間帯では、非常勤のスタッフが起用されていることがよくあります。
厚生労働省が定めるグループホームの人員基準はありますが、人員基準の最低ラインギリギリの人数にするか、より多くのスタッフ数を配置するかは、施設側が自由に決めることができます。人員の配置によってサービスの質や内容が変わるので、入居前に確認をしてみましょう。
基準を上回るスタッフを確保している施設であれば、それぞれの介護職員にかかる負担も少なく、質の高いサービスを受けることが期待できますが、スタッフの数が少ないグループホームでは、時間帯によってはサービスが不十分になることも考えられる、ということになります。
厚生労働省によって人員の最低基準は決められていますが、施設によっては介護職員の数が3:1で配置されていない時間帯もあります。人員の数はサービス提供の質や量にも影響するため、入居検討時には確認するよう心がけましょう。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。