いつ介護が始まってもおかしくない状況における心構えや鉄則は?いつ介護が始まってもおかしくない状況における心構えや鉄則は?

質問

両親が80代です。
今のところは元気なのですが、いつ介護が始まってもおかしくない状況だと思っています。
私は一人っ子ですし、親戚付き合いもほとんどありません。
そうした背景から今後、介護が始まると、これまでのような仕事の仕方はできないと覚悟はしています。
ただ、具体的にどのような心構えであるべきかもわからず、不安ばかりが先行してしまいます。
仕事と介護の両立を成功させるために必要となる考え方、心構え、鉄則のようなものを教えていただきたいです。

回答

ご質問、ありがとうございます。
心構えについては、大きく3つ、意識してもらいたいことがあります。

1つ目は、介護が始まってから対応をするのではなく、介護が始まる前からの準備をしておくことです。
特に親が認知症になってしまうと、親の資産は凍結となり、銀行口座からの出入金ができなくなります。その前に、金融機関に出向いて代理人カードを作成したり、資産が大きい場合は家族信託を進めたりしておくと、後で困ることを減らせます。
また、親の既往歴(過去の病気の歴史)を理解し、親の主治医の連絡先を知っておくことも大事です。さらに、いざ介護となった場合、親は、どのような介護を受けたいのかなどについても、事前に理解しておくと良いでしょう。

2つ目は、いざ介護が始まった場合、介護のために仕事を調整するのではないということです。
介護を優先させて、そうした介護を実現させるために、仕事を調整するような考え方ではいけません。あなたが、どのようなキャリアを歩みたいのか。もっと言えば、どのように生きていきたいのかを可能な限り明確にする必要があります。
そうした自分の理想を実現させるために、介護を調整し、様々な支援を受けていくのです。もちろん、実際には理想の一部をあきらめる必要も出てくるのが介護です。
ですが「あなたがどうしたいのか」がわからないと、支援する側も、必要な支援を考えることができません。

3つ目は、介護は大変なのですが、同時に、大きな意味もあると知っておくことです。
いつかは親の人生にも終わりが来ます。介護の時間は、親子が、お別れの前に過ごす最後の時間です。介護を必要とせず、急に親が亡くなってしまうと、こうした時間はありません。介護を通して、親子はお互いの理解を深めていきます。人生について、より深く考えるようにもなります。
こうしたことは、私たちの人生にとって、非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。

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酒井穣(さかい・じょう)

株式会社チェンジウェーブグループ/リクシス 創業者・取締役 慶應義塾大学理工学部卒。TIAS School for Business and Society経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。帰国後は東証一部上場企業の取締役を経て、2016年に株式会社リクシスを佐々木と共に創業。自身も30年以上に渡る介護の経験者であり、認定NPO法人カタリバ理事なども兼任する。NHKクローズアップ現代などでも介護関連の有識者として出演。 著書:『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2018)、『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2023)
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