当社内のことだけなのかもしれませんが、常時不思議に思っていることがあります。介護に関する会社的な取り組みとして、要介護2以上の介護者を持つ者にはカフェテリアポイントを付与するなど金銭的補助措置があり、とても役に立っています。しかしながら、介護休暇に関しては結果的に歩引きがされることから、お金を必要とする身としては年休を使うようになってしまいます。こうした先の読めない年休利用により、最終的に父が亡くなった時には年休が潤沢に無い状況でした。会社は、社外の相談窓口を用意しています、多くの制度を取り入れていますとうたいますが結果的に金銭的補助につながるものはカフェテリアプランしかなく、先の読めない介護ではあまり会社制度があてにできるものではありません。
介護状態に無い上長や同僚からは、こうした制度がうたわれていることを小耳にもはさんでいることから、多くの手段が用意されていると思っているし、実際に介護状態に無い方々は「なぜ家族を巻き込んで助けられないのか」「自分だって田舎にちょくちょくいって顔みている」だの、当事者でなければわからない苦痛や悲鳴を理解されることはありません。
周囲の理解を得るには、まだまだ周囲の認知度が低すぎ、誰かのおかげになっている人には理解されないことばかりです。当事者になって初めてわかることなのでしょうが、企業教育としてこれらの実態をもっと理解されるような働きかけをするには、何が得策でしょうか?
企業の中で理解を深めるためにできることについて、ご質問ありがとうございます。
お話を伺う限り支援策や制度は相場よりも充実した企業様とお見受けします。
企業・担当の方と試行錯誤しながら取り組む専門職の私自身、悩みながらのお答えになることをご容赦ください。
これだけ多くの働く人が介護に関わらざるを得ない状況は、今までになかったことです。
ましてや介護は、そもそも考えたくない話題。今の段階では当事者にならないとわからないのもしかたない部分があります。
また、限りある企業のリソースを、介護以外の課題も含めどう配分するかはとても難しいことです。
こうした状況で社内の理解を深めるために大事なことは「当事者の苦しみ」対「他の従業員(や会社)の負担」という対立にならないよう進めていくことです。そのために、実態把握と各施策の効果測定をしながら、経営視点で公平かつ効率の良い施策を進めていくことが必要だと考えております。
休業補償を中心とした制度、支援の手段はありますが、制度が実装され始めてから数年で見えてきた課題もあります。
ご質問にあるような、支援の手段を配置するだけでは解決が難しいということもその一つです。
そういった、いくつかの企業が実際にやってみて難しかったポイントが経産省の両立支援ガイドラインに反映されていますので、ご確認ください。
経産省のガイドライン(経営層向け)について、私なりの理解ですが、
・経営層のコミットメントで取り組む意思を示し、推進担当者を置く
・実態把握をして、当事者以外にも課題を認識する
・(休んで介護をするための制度ではなく)ビジネスケアラー当事者が活躍できる人材戦略やサポート制度を設計する
・プッシュ型の情報発信で社内制度の周知と個々のリテラシー向上を計る
といった「効果が出しやすい手順」が書いてあり、私が関わったいくつかの企業の実態とも符合します。
こういった手順を踏んでさらに社内コミュニティなどで相互理解を深めようとされている企業も出てきています。
実際には企業規模・人員構成・業務形態、他のテーマとの優先順位などに応じて順番が前後し、従業員に必要な支援の量も異なります。
理屈では進まないこのテーマについて、各企業・従業員の皆さまのお役に立てる情報提供・サービス開発に努めて参ります。