介護に対する理解に乏しい職場に勤務するビジネスケアラーは、どうすれば良いか介護に対する理解に乏しい職場に勤務するビジネスケアラーは、どうすれば良いか

質問

私は、仕事と介護の両立に苦しむ、いわゆるビジネスケアラーです。
しかし、自分が介護をしていることは同僚、上司、会社には隠しています。
過去に、介護を理由に離職する人がいて、その人に対する会社の対応がひどいものだったのを見ているからです。

私のように、介護に対する理解に乏しい職場に勤務するビジネスケアラーは、どうすれば良いのでしょう。

回答

ご質問ありがとうございます。
現代の日本は「人類史上かつてない高齢化」をしている社会です。今後も、2042年ごろまでは、高齢化率が上がり続けます。
ビジネスケアラーも、今後、増え続けます。そして、ビジネスケアラーの生産性は、支援なしだと、平均で27.5%も低下するという調査もあります。ですから、企業経営にとって、ビジネスケアラー支援は非常に重要な課題なのです。
経済産業省も、2024年3月に、経営者向けのビジネスケアラー支援ガイドラインを発表しています。
今後は、株主も、企業のビジネスケアラー支援に関心を向けていくでしょう。日本全体で、介護リテラシーの向上が求められており、今後は多くの人が、より、ビジネスケアラー支援について考えるようになっていきます。
ですから、介護に関する職場の理解は、今後は、放っておいても高まっていく(時間が解決してくれる)はずなのです。
 経済産業省によるガイドラインでも示されていますが、鍵になるのは、経営層が、ビジネスケアラー支援の重要性を理解することです。経営層のコミットがあり、従業員の介護状況が理解され、それぞれの状況にあった情報提供が行われてはじめて、企業におけるビジネスケアラー支援が形になります。
先進的な企業の場合は、介護の相談窓口(両立相談窓口)が設置されたりもしています。

 問題は、質問者様の勤務する会社は、こうした流れからは大きく遅れていることのように思われます。
会社全体の、介護に関する考え方を変化させる必要があるでしょう。ただ、まだ職場の理解が進んでいない状況で、自分が介護に苦しんでいることをカミングアウトするのは、時期尚早かもしれません。
それで、周囲から心無い対応をされても困ります。

そこで検討いただきたいのは、介護支援を含めた高齢者支援(公的保険外)の市場は、2050年には77兆円産業になる(経済産業省の予測)という、ビジネスチャンスの話題です。日本のインバウンド市場が年間約5兆円ですから、この77兆円という市場の大きさは、かなりのインパクトがあるはずです。
この市場を勉強することは、いかなる業態の会社でも重要なことでしょう。

この方面から、高齢者問題に関する理解を高めていければ、自動的に、ビジネスケアラーに関する理解も進むと考えられます。試してみてください。
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酒井穣(さかい・じょう)

株式会社チェンジウェーブグループ/リクシス 創業者・取締役 慶應義塾大学理工学部卒。TIAS School for Business and Society経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。帰国後は東証一部上場企業の取締役を経て、2016年に株式会社リクシスを佐々木と共に創業。自身も30年以上に渡る介護の経験者であり、認定NPO法人カタリバ理事なども兼任する。NHKクローズアップ現代などでも介護関連の有識者として出演。 著書:『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2018)、『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2023)
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