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要介護5とはどんな状態?受けられるサービスやもらえる給付金制度について解説

高齢者をベッドで介助する女性介護士 #介護の知識

要介護5になると、生活はどう変わるのでしょうか?また、どんなサービスや制度が利用できるのでしょうか?この記事では、要介護5とはどんな状態なのか、要介護4との違いや受けられるサービスやケアプランについて解説していきます。

要介護5とは?

要介護5とは「要介護の度合いが最も高く、介護なしで生活するのが困難な状態」です。
要介護5の具体的な状態や症状を見ていきましょう。

要介護5の認定基準 

要介護5と認定される基準は「要介護認定等基準時間が110分以上、またはこれに相当する状態」です。

「要介護認定等基準時間」とは、厚生労働省が定めたもので、日常的な身体介助や歩行、機能訓練など介護にかかる時間の度合いを表しています。

要介護5の状態 

要介護5では、家事や食事、入浴、排泄、立ち上がりや歩行などの運動が自力で行えないため、日常生活全般に介助が必要です。

・自分で立ち上がって歩くことが難しく、一日中ほとんど寝たきりの場合が多くなる
・自力での寝返りができないため、体位変換のケアが必要になる
・飲食物を飲み込むことが困難になることも多く、流動食などへの対応や、誤嚥(誤って飲食物が気管に入ること)事故への注意が必要になる

 

要介護5の症状 

厚生労働省の『国民生活基礎調査(2019年)』によると、要介護5になる主な原因は、脳卒中・認知症が上位に挙げられています。次点として、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患と続きます。

要介護5の状態としてよく見られる、寝たきりや歩行困難、認知力の低下などは、これらの症状の後遺症として引き起こされることが多いとされています。

(出典:厚生労働省『国民生活基礎調査(2019年)』https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003441832

 

要介護5と4の違い

介護施設の入浴設備

要介護4と5では、利用できる介護サービスの違いや、日常生活の全面的な介助を必要とする点では大きな違いはありませんが、要介護5では、寝たきりや、意思疎通も困難になるケースが多いため、介護時間が大幅に増えていきます。

要介護5要介護4
  • 最重度の介護を要する状態
  • 食事や排泄、入浴など、生活全般に介護が必要
  • 身だしなみや掃除などの家事がほとんどできない
  • 立ち上がったり歩いたりすることができず、ほぼ寝たきりの状態
  • 理解力や思考力の低下が見られ、意思の疎通がほぼ不可能なことも多い
  • 重度の介護を要する状態
  • 食事や入浴、着替えなど日常生活のほとんどに介助が必要
  • 身のまわりのことや家事が自分ひとりでは難しい
  • 自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しい
  • 全般的な理解の低下が見られ、意思疎通が難しい

 

要介護5の生活はどうなる?

要介護5の認定を受けたら、利用する介護サービスの変更や施設入居の検討など、生活に変化が出るのでは?と思われている方も多いはずです。実際に、在宅の場合は支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の介護時間も大幅に増えるだけでなく、本人の安全面・健康面、余命などに不安も出てきてしまうでしょう。

要介護5で必要とされる介護時間をしっかり理解し、受けられるサービスをうまく活用していくことが大切です。

平均寿命と健康寿命の関係

厚生労働省の『健康寿命の令和元年値について(2019年)』によると、現在の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳。
一方で、「健康上の問題を抱えることなく日常生活を送れる期間」とされている健康寿命は、男性は72.68歳、女性は75.38歳です。

この数字から、理論上の介護期間を推計することができます。

男性の場合:平均寿命81.41歳 - 健康寿命72.68歳=介護期間8.73年

女性の場合:平均寿命87.45歳 - 健康寿命75.38歳=介護期間12.06年

平均的な介護期間はどれくらい?

上記の厚生労働省のデータから推測される介護期間とは別のデータを見てみましょう。

公益財団法人 生命保険文化センターの『生命保険に関する全国実態調査(2021年度)』のデータによると、実際の平均介護期間(現在介護中の方は介護を始めてからの経過期間)は、約5年1ヶ月という調査結果が出ています。

理論上の介護期間とは大きく異なる結果ですが、内訳を見ると4年以上介護を必要とされた方は約5割、6ヶ月未満の方は3.9%、10年以上の方は17.6%となっており、介護期間は年齢や病状によって様々で、個人差が大きいことが分かります。

いずれのデータも平均値ですので、あくまでも参考の目安としてください。

要介護5では特養に入りやすくなる?

特養(特別養護老人ホーム)は、比較的安い費用で良質な介護や看護のサービスを受けることが可能なため、人気のある施設です。近年は医療ケアを充実させて、看取りまで行う特養も増えています。

要介護5の方は、日常生活のほぼすべてに介助が必要なため、優先的に特養に入れる可能性があります。

要介護5になってから生活も大きく変化するはずなので、無理のない介護を続けるためにも、担当のケアマネージャーへ相談をしていきましょう。

要介護5の場合は一人暮らしすることは可能?

要介護5は寝たきり状態がほとんどで、日常の動作すべてに介助が必要となります。

一人暮らしの場合は、訪問介護が1日2回以上必要になるとされています。緊急時の対応も難しく、特に認知症の場合は、生活面での危険度も増すでしょう。

また、医療ケアが欠かせない状態になると、一人暮らしでの介護は更に困難となります。要介護5での一人暮らしを行うことはかなり難しいのが現状と理解しておいてください。

 

要介護5で受けられるサービスや制度

要介護5の方は、要介護認定で最も症状の重い状態にあるので、利用できる介護給付サービスの種類に制限はありません。

要介護5で利用できるサービスと施設

要介護5の方は、介護保険制度を利用して以下のサービスを受けることができます。

内容サービス名
自宅で受けられるサービス訪問介護(ホームヘルプ)
訪問看護
訪問入浴
訪問リハビリ
定期巡回・随時対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護
施設での介護サービス通所介護(デイサービス)
通所リハビリ
療養通所介護
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
短期間の施設への宿泊短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護
施設入居特別養護老人ホーム(特養)
特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)
介護老人保健施設(老健)
介護療養型医療施設
介護医療院
小規模施設に入居認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
福祉用具の使用福祉用具レンタル
特別福祉用具販売

 

要介護5で受けられる給付金制度

要介護5では、介護サービスを利用するために最大362,170円まで支給されます。この支給限度額のうち、サービス利用料の1~3割は自己負担。この額を超えた場合、超過分は全額自己負担となります。

要介護5の区分支給限度額
362,170
自己負担の割合1割2割3割
自己負担額36,217円72,434円108,651円

 

また、要介護5で受けられる給付金制度・控除制度には、主に以下のようなものがあります。

  • 高額介護サービス制度
  • 障がい者控除
  • 紙おむつ給付とおむつ代助成制度
  • 住宅改修補助制度

要介護5で受けられる給付金制度について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

  • 要介護5は、要介護認定の中で最も症状の重い状態です。
  • 要介護5は、寝たきりや意思疎通の困難などがみられ、重度の介護が必要です。
  • 要介護5で受けられる介護サービスの利用には制限がありません。
  • 介護保険制度は、1ヶ月あたり362,170円まで利用できます。
  • 在宅介護や一人暮らしは極めて困難で、施設入居を選択する人が増えます。

要介護5は常時全面的な介護が必要になるため、さまざまなサービスが受けられますが、本人や家族に合った施設や介護サービスを選択することが重要です。

担当のケアマネージャーへ相談して、介護者・支援者(介護家族・ビジネスケアラー)にとって最適なサービスを見つけていきましょう。

 

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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