訪問リハビリテーションとは?
訪問リハビリテーション、略して訪問リハビリとは、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が利用者の自宅を訪問し、リハビリテーションを提供することです。
下記のような、身体の回復や日常生活の自立を目指したリハビリを受けることができます。
- 身体病状の観察
- 身体機能の改善
- 日常生活の指導・助言
- 介護相談・家族支援
- 環境整備に対する提案
訪問リハビリは、主に施設や病院への通院が困難な方や退院後の日常生活に不安がある方などに適したサービスで、日常生活の自立を目指すにあたり、実際にお住まいの環境に合わせた訓練を受けられることが大きな特徴です。
また、リハビリと同時に、専門職の目から見た環境整備の改善提案や支援者(介護家族・ビジネスケアラー)への日常ケアのアドバイスを受けることができます。
訪問リハビリテーションが受けられる対象者
訪問リハビリを受ける対象者には、次の2つの条件を満たす必要があります。
|
- 要介護1以上の方
65歳以上で要介護認定を受けている要介護1以上の方が対象です。40〜64歳の方で、16種の特定疾病により介護認定を受けている方も対象となります。
また、要支援1〜2の方は、介護予防である「介護予防訪問リハビリテーション」の利用対象となります。
- 医師から訪問リハビリテーションの必要性を診断された方
訪問リハビリの利用には、主治医から訪問リハビリが必要であると診断されることが必須です。
診断される例として、以下のような症状が挙げられます。
- 筋力が低下し、歩きにくい
- 食べ物、飲み物を飲み込むのが難しい
- 言葉をはっきりと話せない
- 体の一部に麻痺が見られる
- 体を思うように動かせない
- 日常生活に不安がある
訪問リハビリテーションで受けられるサービス内容
訪問リハビリの目的は、利用者の日常生活の自立と、社会参加を促すこと。
自宅にいながら、その人それぞれに合ったマンツーマンのリハビリを受けられるため、生活の質も上げることができます。
訪問リハビリテーションで行うこと
具体的に、訪問リハビリでできることを見ていきましょう。
<訪問リハビリでできること>
リハビリ内容 | 詳細 |
病状の観察・助言 | ・バイタルチェック(体温、脈拍、呼吸、血圧、意識レベル等) ・精神面の健康状態の確認と助言 ・症状の再発予防と予後予測 ・支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の介護負担の確認と助言 |
身体機能の改善 | ・身体機能(筋力、柔軟性、バランス等)の維持、改善 ・痛みの評価と物理療法等の疼痛(激しい痛み)緩和 ・摂食嚥下機能の改善 ・コミュニケーション機能の改善 |
日常生活の指導・助言 | ・ADL(日常生活動作)の指導 ・QOL(生活の質の向上)や趣味、社会参加促進のための助言 ・福祉用具や補装具、住宅改修の評価と相談 |
介護相談、家族支援 | ・療養生活上の相談、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)への介護指導、精神的な支援 ・福祉制度利用の相談、助言 |
理学療法士などのリハビリ専門職によるケア
リハビリ専門職とは、国家資格である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などを指します。
このリハビリ専門職が、病院や診療所、介護老人保険施設から派遣され、利用者の自宅を訪問しリハビリを行ってくれます。
以下が、各リハビリ専門職が行うリハビリ内容です。
理学療法士(PT:Physical Therapist)
運動・体操・マッサージなどで、立ち上がる・歩くなどの日常生活に必要な基本動作を行う身体機能の維持・回復を目指す
作業療法士(OT:Occupational Therapist)
家事・手芸・工作などの作業を通じて、認知機能などの心身の機能、社会適応力の維持・回復を図る
言語聴覚士(ST:Speech Therapist)
発生・発語・会話やコミュニケーションの訓練、嚥下の機能訓練などを行う
訪問リハビリテーションを利用するタイミングは?
では、どんな時に訪問リハビリを利用するのがいいのでしょうか。
訪問リハビリを受けるのに適したケースを見てみましょう。
- 寝たきりで、病院や施設でリハビリを受けることができない
- 退院後に思うように体が動かず日常生活が不安
- マンツーマンでリハビリ専門職のリハビリを受けたい
- リハビリが必要だが、本人が通所リハビリに行きたがらない
- 身体介助の方法をリハビリ専門職から教わりたい
- 自宅で安全にリハビリを受けたい
リハビリ専門職に自宅に来てもらうという利点を生かし、利用者の状態に合わせながら適切なタイミングでの利用を検討してみましょう。
訪問リハビリテーションの費用や利用回数の目安
訪問リハビリの利用頻度は、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいた回数になります。
利用には限度があり、1回20分、週6回まで(1回40分の場合は週3回まで)です。
訪問リハビリの費用には、基本料金のほか場合により加算料金があることを理解しておきましょう。また、住んでいる地域によって料金が異なる場合があります。
訪問リハビリテーション費用の目安
- 要介護の方の場合
<訪問リハビリ費用の目安> ※自己負担額1割負担で20分訪問の場合
内容 | 費用 | |
訪問リハビリテーション:基本報酬 | 334円/回 | |
リハビリテーションマネジメント加算 (A)イ:医師による医学的管理のもと定期的に計画を見直し理学療法士等が説明 (A)ロ:(A)イ上記に加え、厚生労働省に計画書等の情報を提出 (B)イ:医師による医学的管理のもと定期的に計画を見直し医師が説明 (B)ロ:(B)イに加え、厚生労働省に計画書等の情報を提出 | (A)イ 196円/月(A)ロ 232円/月 (B)イ 490円/月 (B)ロ 526円/月 | |
短期集中リハビリテーション実施加算 =退院(退所)日又は 認定日から週2日以集中的に訪問した場合、退院(退所)日から3カ月以内が算定期間。 | 218円/3月 | |
移行支援加算 =リハビリ終了者のアフターフォローや他事業所との連携を行う | 19円/日 | |
サービス提供体制強化加算 =基準を満たしたリハビリ専門職を配置している | 7円/回 |
- 要支援の方の場合
<介護予防訪問リハビリ費用の目安> ※自己負担額1割負担の場合
内訳 | 費用 | |
訪問リハビリテーション | 334円/回 | |
サービス提供体制強化加算 | 218円/3月 | |
短期集中リハビリテーション実施加算 | 7円/回 |
介護保険や医療保険が適応される
訪問リハビリは、介護保険の適用対象です。状況により医療保険が使えるケースもあります。ただし、介護保険と医療保険の併用はできません。
要介護認定を受けている方は、原則として介護保険が優先されます。
医療保険で訪問リハビリが利用できる方
・40〜64歳で16種の特定疾病に該当しない方が訪問リハビリを利用する場合
・65歳以上で要介護認定を受けていない方
訪問リハビリテーションのメリットと注意点
訪問リハビリのメリットと注意点を紹介します。
同じくリハビリが受けられるサービス、通所リハビリとの違いも確認し、比較検討してみてください。
訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションの違い
両者の最も大きな違いは、リハビリを行う場所です。訪問リハビリは利用者の自宅、通所リハビリは施設で行います。
それぞれにあるメリット、デメリットをよく理解して、本人に合うサービスを選ぶことが大切です。
<訪問リハビリと通所リハビリ(デイケア)のメリットの違い>
訪問リハビリ | 通所リハビリ(デイケア) |
|
|
<訪問リハビリと通所リハビリ(デイケア)の注意点の違い>
訪問リハビリ | 通所リハビリ(デイケア) |
|
|
訪問と通所の併用も可能
訪問リハビリと通所リハビリは併用が可能です。
訪問リハビリを受けながら、通所リハビリも受けることで、自宅ではできないリハビリに取り組めるだけでなく、他の利用者との交流も生まれます。
社会参加への促進という意味でも、両方のリハビリをうまく組み合わせて活用していくことも検討してみましょう。
訪問リハビリテーションを受ける手続きの流れ
訪問リハビリを利用したいと思ったら、まずは担当のケアマネジャーに相談をしてみましょう。要支援の方は、お住まいのエリア管轄の地域包括センターへ相談を。
申し込みの手順
- 担当のケアマネジャー(要支援の方は地域包括センター)に相談し、訪問リハビリを依頼する事業所を決める。
- 主治医に訪問リハビリを利用したい旨を伝え、リハビリが必要な旨の指示書を書いてもらう。
- 訪問リハビリ事業所と契約する。
- 訪問リハビリ事業所の医師や理学療法士などが、リハビリ計画書を作成。ケアマネジャーはケアプランに組み入れる。
- 利用開始。リハビリ計画書に基づき、リハビリテーションを受ける。
まとめ
訪問リハビリは、リハビリ専門職が自宅を訪れてリハビリを行ってくれるので、自宅の環境に合わせたリハビリやマンツーマンで利用者に適したリハビリを受けられ、通院が困難な方にとってもメリットの多いサービスです。
利用条件があるため、利用したい方すべてがすぐにサービスを受けることはできませんが、訪問リハビリの必要性を感じた時には、ケアマネージャーやかかりつけ医に相談をしてみましょう。