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老健と特養の違いは?入居条件・サービス内容・費用・設備などの違いを解説

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特養と老健の違いについて

特別養護老人ホーム(特養)とは、常時介護を必要とする要介護3以上の方を対象に、介護ケアと生活支援を受けながら暮らすことができる入居施設です。一方、介護老人保健施設(老健)は、リハビリに重点がおかれ、介護ケアを受けながら在宅復帰を目的とする施設です。

まずは両施設の主な違いを見ていきましょう。

特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)
施設の役割・目的終の棲家として介護を受けながら生活する在宅での生活を目指す
入居条件要介護3~5

介護が常に必要

要介護1~5

全身状態が安定

サービス内容・日常生活上の介護

・身の回りの世話

・機能訓練・レクリエーション

・医療ケア

・リハビリテーション

・日常生活上の介助・援助

1か月の自己負担費用目安(要介護5・多床室利用の場合)約104,200円約94,753円
医師の配置必要な数

(非常勤も可)

入所者100人当たり1人以上

(常勤)

平均在所日数1,405日(約4年)299日(1年未満)
入所期間終身にわたって入所可能原則として3ヶ月
入所難易度長期間入所するので、待機者が多く、入りにくい入所期間が短いため、比較的入りやすい

 

特養と老健 入居条件の違い

両施設における入居条件の一番大きな違いは、介護度です。原則として特養は「要介護3以上」、老健は「要介護1以上」であることが、入居のための条件となります。

特養と老健の入居条件

特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)
  • 65歳以上で要介護3以上
  • 40~65歳未満で特定疾病が認められた要介護3以上の方
  • 特例によって入所が認められた要介護1~2の方
  • 65歳以上で要介護1以上
  • 40~65歳未満で特定疾病が認められた要介護1以上の方

特養の「特例入所」の条件例は、要介護1~2であっても介護してくれる身寄りがいない、あるいは家族から介護放棄などの虐待を受けていたり、重度の認知症を患っているような場合などです。

老健はあくまでリハビリによって在宅復帰を目指す施設であるため、リハビリなどが必要なく生活介護のみを目的とされている方は、入所することができません。

また、両施設共に、常時医療ケアが必要な方や専門的な高度医療ケアが必要な方は入所を断られる可能性があるため、入居検討の際には事前確認をしておきましょう。

 

特養と老健 入居期間の違い

特養と老健では入居期間の長さが異なります。

特別養護老人ホームは看取りまで対応している施設も多く、終身利用が可能です。老健は原則として3ヶ月ごとに状態を確認し、在宅復帰が可能かどうか入居の継続が検討されます。

特養と老健の入居期間

特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)
終身にわたって入居可能原則として3ヶ月

(3ヶ月ごとに入居継続を判断)

老健は、在宅復帰が可能と判断された場合は退所をしなくてはなりません。介護度の高い方が長期入居・終身入居を検討されている場合は、特養の入居が適しています。

 

特養と老健 サービスの違い

両施設ともに、食事・身体介護・生活支援といった基本的なサービスは行われますが、特養は介護度が高い方のためにより手厚い介護サービスの提供、老健は充実したリハビリや医療ケアサービスの提供という違いがあります。

特養と老健のサービス内容

特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)
  • 身体介護(入浴・排泄など)
  • 生活支援
  • 食事
  • 機能訓練(※施設により異なる)
  • レクリエーション・イベント
  • 健康管理・緊急対応
  • 看取り
  • リハビリ
  • 医療・看護
  • 身体介護(入浴・排泄など)
  • 生活支援
  • 食事
  • レクリエーション(機能訓練の一環として)

特養では、手厚い生活介助サービスに重点が置かれているため、重度の医療的ケアは行われませんが、医療機関との提携により緊急時に対応ができる体制が整えられています。日常的なバイタルチェックなどの健康管理が行われ、リハビリや機能訓練は施設によりサービス提供の有無が異なります。

老健は、1名以上の医師が常駐しており、看護師の数は特養よりも多く配置され、リハビリ専門職の配置が義務付けられています。レクリエーションの有無は施設により方針が異なりますが、多くは娯楽というよりも作業療法や機能訓練の一部として行われる傾向にあります。

 

特養と老健 設備・居室の違い

老健と特養には、生活していくうえで必要な居室(個室・多床室)、トイレ、浴室のほか、共同利用のための食堂やリビングスペースなどが備わっています。個室の場合は、簡易キッチンやトイレ、浴室が完備されているのが一般的です。

1名あたりの居室の広さは、従来型個室の場合、特養が10.65㎡以上、老健は8㎡以上と介護保険制度で決められており、居室のタイプは以下の4種類があります。

従来型個室1人部屋
多床室1部屋を家具やカーテンなどで仕切り、2~4床が配置される
ユニット型個室複数の1人部屋がリビングや食堂などの共同スペースを囲んで配置されユニットを形成
ユニット型個室的多床室リビング・食堂などの共用スペースとパーテーションで仕切られた個室のような複数居室が合体しユニットを形成

ユニット型の場合、ユニット(10名程度)ごとに専任のスタッフが付くことが一般的になっています。ひとりひとりの身体状況をよく知るスタッフによる、目の行き届いたケアが可能であるというメリットがあります。

個室に比べ多床室はプライバシーを確保しにくいデメリットがありますが、仕切りや配置によって快適に過ごせる工夫がされている施設もあります。

居室環境や設備については、特養か老健かの違いというよりも、施設ごとの方針により大きな違いが見られます。

 

特養と老健 費用の違い

特養と老健にかかる費用は、いずれも月額費用のみで、入居一時金は必要ありません。

費用の内訳も基本的に両者共通で、金額は居室のタイプや要介護度によって変動します。

どちらも公的施設であるため、居住費に大きな差はありませんが、リハビリや医療ケアが必要な分、老健の方が少し高めに設定されていることが一般的です。

特養と老健の月額費用の内訳

  • 施設介護サービス費用(介護度や居室タイプにより異なる)
  • 介護サービス加算(利用状況や施設により異なる)
  • 居住費
  • 食費
  • 医療費(利用状況により異なる)
  • その他日常生活費(医療費や理美容代など個人により異なる)

特養と老健の月額費用の目安(自己負担1割の場合)

特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)
月額8~13万円程度月額8~14万円程度

 

特養と老健に向いている方

公園を歩くシニア・高齢者夫婦(笑顔・カメラ目線)

特養と老健それぞれの施設の特徴から、どのような方の入居が適しているのか解説していきます

特養に向いている方

  • 費用の安い老人ホームを希望している方
  • 終身利用できる入居施設を希望している方
  • 要介護3以上だが、重度の医療ケアを必要としていない方

公的施設である特養は、民間施設よりも費用が安く、予算を抑えたい方に向いています。在宅介護をすることが困難で、終の住処としての入居先を探している方に適していますが、高度な医療が必要となった場合は退去になる場合があるので注意が必要です。

人気の高い施設であるため、入居待ちに時間がかかるということを心得ておきましょう。

老健に向いている方

  • 病院から退院後、すぐに在宅復帰することが困難な方
  • 施設で生涯を終わらせるつもりはなく、在宅復帰を希望している方
  • 医療的なケアやリハビリを必要としている方
  • 介護度は低いが施設を利用したい方

病気やケガなどで入院をされていた方が、一人暮らしの場合や支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方が十分なケアができないなどの理由で、すぐに在宅復帰ができない場合、数ヶ月単位でリハビリに専念できる老健への入居が適していると言えます。

また、特養や他の施設への入居待ちの間に利用される方も少なくありません。

 

まとめ

  • 特養は、要介護度が高くても終身で利用することができる介護サービスを中心とした施設
  • 老健は、医療ケアやリハビリが充実した在宅復帰を効率良く目指す施設
  • 特養と老健は、どちらも介護保険が適応される公的施設

施設への入所を検討されている方の目的は様々です。入居期間はどれくらいなのか、受けたいサービス内容は何かにより、特養・老健どちらの施設が適しているかの判断は全く異なります。利用者の状態やニーズに合った入居の検討をしていきましょう。

 

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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