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認知症とは?初期症状からチェックリストまで認知症について解説

認知症初期症状ありの高齢者と介護福祉士 #介護の知識

認知症初期症状チェックリスト

全国の認知症の人の数は、令和7年には約700万人になると推定され、これは65歳以上の5人に1人の割合です。(注記:推計値は厚生労働省公表の値)
診断をまだ受けていない方も、「もの忘れ」や「不安感」「怒りっぽくなった」などの症状が少しでも気になり始めたら、まずは自分でチェックすることをお勧めします。
また、このチェックリストはご自身だけでなく、ご家族や身近な方がチェックすることもできます。

 

「もしかして認知症かも?」と気になったら、まずはこちらをチェックしてみましょう。

◆チェック1

財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか

まったくない(1点)/ときどきある(2点)/頻繁にある(3点)/いつもそうだ(4点)

◆チェック2

5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか

まったくない(1点)/ときどきある(2点)/頻繁にある(3点)/いつもそうだ(4点)

◆チェック3

周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか

まったくない(1点)/ときどきある(2点)/頻繁にある(3点)/いつもそうだ(4点)

◆チェック4

今日が何月何日かわからないときがありますか

まったくない(1点)/ときどきある(2点)/頻繁にある(3点)/いつもそうだ(4点)

◆チェック5

言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか

まったくない(1点)/ときどきある(2点)/頻繁にある(3点)/いつもそうだ(4点)

◆チェック6

貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできますか

問題なくできる(1点)/だいたいできる(2点)/あまりできない(3点)/できない(4点)

◆チェック7

一人で買い物に行けますか

問題なくできる(1点)/だいたいできる(2点)/あまりできない(3点)/できない(4点)

◆チェック8

バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか

問題なくできる(1点)/だいたいできる(2点)/あまりできない(3点)/できない(4点)

◆チェック9

自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか

問題なくできる(1点)/だいたいできる(2点)/あまりできない(3点)/できない(4点)

◆チェック10

電話番号を調べて、電話をかけることができますか

問題なくできる(1点)/だいたいできる(2点)/あまりできない(3点)/できない(4点)

20点以上の場合は、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があります。

お近くの医療機関や相談機関に相談してみましょう。

このチェックリストの結果はあくまでもおおよその目安で医学的診断に代わるものではありません。認知症の診断には医療機関での受診が必要です。

※身体機能が低下している場合は点数が高くなる可能性があります。

出典:東京都福祉局「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/ninchishou_navi/checklist/index.html

 

親が認知症かも?認知症の初期症状

認知症初期症状に悩む高齢女性
認知症初期症状として見られるのは、主に以下の4つの変化です。

  • もの忘れ
  • 見当識の衰え
  • 理解力・判断力・集中力の低下
  • 性格の変化

では、具体的な症状や認知症かどうかを見極めるポイントを見ていきましょう。

もの忘れ

もの忘れは年齢や認知症に関係なくしばしば起こるものですが、認知症におけるもの忘れの特徴は、日常生活の体験自体を忘れてしまう点にあります

例えば、単なるもの忘れは「何を食べたか思い出せない」のですが、「食べたこと自体を忘れる」のが認知症のもの忘れで、記憶障害とされます。

  • 以前買ったものと同じものを買ってしまう
  • 外出や約束の予定を忘れてしまう
  • 同じこと繰り返し聞いたり、言ったり、行ったりするようになる
  • 置き忘れ、しまい忘れ、紛失が増える

見当識の衰え

見当識とは、「今はいつなのか」「ここはどこなのか」「なぜここにいるのか」「目の前にいる人は誰なのか」など、自分の状況と周りの関係を結びつけて考えることができる機能のことです。

見当識に障害が起こると、時間→場所→人間関係の順で物事が分からなくなっていきます。

認知症は、この見当識障害が起こる代表的な症状と言われています。

  • 今日が何月何日なのかが分からない
  • 自分の年齢を忘れてしまう
  • 今いる場所が分からなくなる
  • 何度も行ったことがある知っている場所で迷う

理解力・判断力・集中力の低下

認知症の初期症状では、理解力や判断力、集中力の低下で今までと違った行動が見られるようになります。

些細な日常の行動が続かなくなったり、今までできていたことができなくなったりすることは、本人よりもご家族の方が気づきやすいかもしれません。

  • 新しいことを覚えられない
  • 簡単な計算ができなくなる
  • 説明や会話が通じにくくなる
  • 料理の失敗が増えた
  • 車の運転でミスが増えた
  • 信号のタイミングが分からなくなっている
  • 銀行のATMの操作がうまくいかなくなる
  • 新聞や本を読まなくなった
  • 趣味や家事や片付けを途中で投げ出してしまう

性格の変化

認知症は、感情のコントロール機能が低下し、性格や人格に変化が現れる例もあります。無気力や無関心の状態になったり、考え方が否定的になったり暴力的になるなど、この変化には個人差があります。

なお、認知症によるうつ症状と心の変化によるうつ病の区別は難しいため、医師による正しい診断を受けましょう。

  • やる気がなくなった
  • 怒りっぽくなる
  • 頑固になった
  • 失敗を人のせいにするようになる
  • ふさぎこんでしまう
  • 暴言を吐いたり暴力をふるうようになる
  • 身だしなみを気にしなくなった

 

認知症早期発見の重要性

認知症ケアの早期発見が重要と言われる理由は、進行の速度を抑えられたり、低下した機能を回復できるなどの可能性があるためです。

現在の医学では、認知症を根治する治療は見つかっていませんが、アルツハイマー型認知症などは早い段階であれば進行を遅らせる薬物治療もあります。

認知症の治療効果は、発見が早ければ早いほど高くなると言われています。前述したような日常生活での些細な変化を見逃さないよう、ご家族の方は注意深く観察しておきましょう。

 

認知症の初期症状かも?と感じたら

軽度認知症(MCI)は治療が可能

健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーンの段階のことを、軽度認知症(MCI:Mild Cognitive Impairment)と言います。認知機能の一部に低下が見られるものの、症状の程度は低く、日常生活は問題なく送れているという状態です。

軽度認知症(MCI)は、必ず認知症となるわけではありません。正常な状態に戻る可能性もあり、専門医による治療を行うことができます。

軽度認知症(MCI)の改善には、健康的な食事や運動、認知機能トレーニングなどが推奨されています。

医師の診察

認知症かな?と気になった時は、いち早く専門の医師の診察を受けましょう。もの忘れの多さやうつの状態などは、認知症かどうかの判断が難しく、専門医による正しい診断が必要です。

ただし、本人が認知症と認めたくないため病院へ行くのを嫌がり、認知症の専門医や精神科、脳神経内科などに診てもらうことが難しいケースもしばしばです。そういう場合は、まずはよく知っているかかりつけ医の受診から始めてみてください。

専門家への相談

認知症初期症状で不安な時には、専門の相談先も知っておきましょう。かかりつけ医以外に、以下のような相談先があります。

地域包括支援センター認知症疾患医療センターや認知症初期支援チームなどの機関と連携
適切なサポートサービスを提供
お住まいの地域での支援を受けられる
もの忘れ外来認知症を早期発見し治療するための、認知症専門医が在籍している外来
主に総合病院などに併設
電話相談認知症の電話相談
公益社団法人 認知症の人と家族の会
TEL:0120-294-456 / 050-5358-6578
受付時間:10時〜15時(年末年始と祝日を除く月~金曜日)若年性認知症コールセンター
社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修 大府センター
TEL:0800-100-2707
受付時間:10時〜15時(年末年始と祝日を除く月~土曜日)
水曜日は10時〜19時

リハビリを受ける

認知症の治療には、薬物療法もありますが、リハビリなどの非薬物治療法も欠かせません。

認知症と診断されると、介護保険サービスを使い、医療施設やデイサービスなどの通所施設、グループホームなどの介護施設で作業療法などのリハビリを受けることができます。

また、ご家族との会話や日常生活に合わせて自宅でできるリハビリも効果的と言われています。

認知症のリハビリを始めるためには、まずは医師の診断を受けましょう。

 

認知症の診察を促す方法

認知症の診察を促す
認知症の前兆が見られても、初期段階では病院に診察へ行くことを嫌がる方はたくさんいらっしゃいます。ご家族自身も、気持ち的に診察を勧めにくいケースもあります。

どうすればスムーズに認知症診察の提案ができるのでしょうか?

健康診断の一貫として通院を促す

健康診断として通院に誘うことで、健康状態の確認と併せて認知症の確認ができるとなれば、気持ちも楽に受診してもらえるでしょう。

認知症の疑いがあれば、検査が必要となります。よく知ったかかりつけ医からのアドバイスであれば、検査の重要性を理解してもらいやすく、受け入れもスムーズにいくはずです。

知人の体験談を話す

認知症の診断を受けたという知人の体験談を話すこともひとつの手です。

本人にも認知症初期段階の不安があれば、検査の必要性を理解して前向きに受診してくれる可能性があります。

家族ではない第三者からの説得

家族に催促されると、逆に頑固になって拒否される場合もあります。かかりつけ医や、ご本人の身近な同世代などから「認知症対策は早めがいい」などの説得があれば、心理的なハードルが下がります。

 

認知症初期症状が現れた時にご家族ができること

「もしかすると認知症かも?」と不安になるのは、ご家族はもちろんですが最も辛い気持ちになっているのはご本人です。まずは、ご家族が認知症の初期症状をよく理解し、ご本人の気持ちに寄り添うことが大切です。

最初はご家族の方も戸惑ったり驚いたりされるでしょうが、メモを取るなどして初期段階の記録を残しておきましょう。

医師へ現在の症状を正確に伝えることが、適切な初期治療に繋がるからです。

前述した通り、認知症初期症状は、早期発見が鍵となります。早い段階で医師の診断を受けるために、ご家族による日々の観察力と協力が必要不可欠です。

 

まとめ

認知症の初期段階は、もの忘れから始まるケースが多くみられます。「認知症初期症状チェックリスト」を利用して、現在のもの忘れのレベルを確認してみてください。

認知症の治療効果は、発見が早ければ早いほど高くなると言われています。テスト結果で「これは認知症初期症状かも?」と気になった時は、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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