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認知症で要介護認定を受けるには?調査内容や使える介護保険サービス、やり直しの方法まで紹介

認知症の方へのカレンダー日程確認の様子 #介護の知識

家族が認知症と診断を受けたとき、認知症の人の日常生活をどのように援助していくかを考えなければなりません。家族だけで介護が続くと負担が増していき、介護している家族が精神的あるいは身体的に疲弊してしまう可能性もあります。

家族が認知症になり介護が必要になったときは、要介護認定を受けることでさまざまな介護サービスを利用することができます。介護保険は、介護する家族にとっての手助けになるでしょう。

今回は、介護保険制度の仕組みや認知症との関係をお伝えします。

 

認知症の要介護認定とは

認知症を発症した際に介護保険サービスを利用する場合は、要介護認定を受ける必要があります。介護保険制度では、病気の重さと介護(介助)の内容は、必ずしも一致するわけではなく、同じ認知症でも、症状によって介護の必要度は異なります。

要介護認定とは、被介護者がどの程度の介護が必要であるかを判定するものです。

寝たきりや認知症で常時介護が必要となった場合や、日常生活で部分的に支援が必要な場合、介護サービスを自己負担1~3割で受けることができます。

体が元気な場合は介護認定が下りない?

要支援とは現在介護の必要はないものの将来的に要介護状態になる恐れがあることを示し、何らかの介護予防の対策が必要な状態です。対して要介護とは、入浴・排泄・食事などの日常生活動作において、常時介護を必要とすると見込まれている状態のことです。

要支援2から要介護1となる基準としては、認知症の疑いの有無や、日常生活の自立状態、居宅での生活能力、独居か同居家族がいるかなどによって変わります。

これらの基準の状態によって要介護1と判断されるかどうかが決まります。その中でも認知症の兆候がすでに見え始めている場合、基本的には要介護1以上と判断されます。

しかし、要介護度の認定は申請をすれば下りるというわけではなく、認定に至るまでにはさまざまな調査が行われます。

実際にどのような調査や判定があるのかを知っておくことも、要介護認定を受けるうえでは重要です。

 

認知症の要介護認定の調査内容

要介護認定は、主治医の意見書と認定調査員が実際に訪問して申請者本人の心身の状態を確認したり、生活環境や家族構成などについて聞き取りなどを行う訪問調査を実施したりして、現在の状況を確認します。

その後、それらのデータをもとに、コンピューターによる一次判定を実施。そして介護認定審査会によって最終的に要介護度が決定されます。

要介護認定の基準は「その人に対してどのくらいの介護時間が必要か」という「要介護認定等基準時間」によって定められます。

認定調査の際に、高齢者が緊張してしまうことや、普段よりもよく見せようと頑張ってしまうことがあります。

認定調査は、調査時の状況よりも普段の状況を確認して評価するものなので、普段の本人の実情をよく知っている家族が必ず同席し、必要に応じてフォローを行いましょう。

情報を裏付ける根拠として、介護が必要となった経緯を時系列にまとめておくと良いでしょう。順序立てて説明することで相手に伝わりやすくなり、また家族の介護力についても把握してもらうことができます。

認知症の要介護認定のランクは?

要支援・要介護度イメージ

介護保険サービスは要介護度によって支給限度額や受けられる内容が異なります。

介護度が最も軽いのが要支援1、最も重いのが要介護5。

要支援と要介護の大まかな違いとしては、身の回りの多くのことを自分でできるかどうかです。要支援は誰かの支援があれば自立した生活を続けられますが、要介護になると日常生活の全般で介護や介助が必要です。

前節で述べたように、認知症状態であると要介護1以上になることが少なくありません。しかし、そもそも要介護認定は生活状況や健康状態、自立度などによって総合的に決まってくるものです。

以下は要介護1〜5について認知症状態にも触れながらまとめていますので参考にご確認ください。

要介護1食事や排せつは1人でできるが、立ち上がりや歩行に不安があるため、一部介助が必要であったり、認知症によって認知能力や運動能力の低下が見られたりする状態
要介護2要介護1の状態に加えて、認定症で理解力が低下していたり、トイレや入浴といった日常生活での見守りや介助が必要であったりする状態
要介護3要介護2の状態と比較して、理解力の低下や問題行動が見られたり、立ち上がりや歩行が1人でできなかったりする状態
要介護4要介護3の状態に加え、トイレや食事、着替え、入浴など全面的な介助が必要だったり、認知症による思考力や理解力の低下によって意思疎通が難しかったりする状態
要介護5要介護4の状態よりも、さらに動作能力が低下していて、日常生活全般で介助が必要であり、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態(1日中寝たきりで意思疎通も困難など)

※参考URL:厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」

要介護認定に有効期間はあるの?

要支援や要介護の認定結果は新規だと6ヶ月、更新している場合は12ヶ月という期限(状況により長短あり)があります。

介護認定は自身で更新する必要があり、期限を過ぎると介護保険のサービスが全額自己負担となったり、サービスが利用できなくなったりするため注意しないといけません。

また、申請者の状態が安定している場合は、更新認定の期間が最大48ヶ月に延長されることもありますが、実際の有効期間については、ケアマネジャーなどの専門家に相談すると安心でしょう。

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要介護認定には有効期限があるの?更新の方法や期限が切れたらどうなるのかをわかりやすく解説!

 

認知症の要介護認定を受けるポイント

認知症チェックを行う人物と高齢者の手

認知症の人でも要介護認定を受けることはできますが、認定を受けるには普段の様子や生活環境などを、医師や調査員に事細かに伝えることが大切です。

認定調査の日程は事前に調整してもらうことができるので、訪問日は本人だけではなく家族も立ち会い、ご家族が行っている援助や介護についてや、ご家族の現在の気持ち、体調面なども伝えておくことが重要です。

親御さんが被介護者の場合は、「弱いところを見られたくない」「まだまだ大丈夫」という気持ちや自尊心から見栄を張ってしまうこともあります。本人の気持ちも配慮し、伝えにくいことは事前にメモなどを残しておいて当日調査員に渡すのもひとつの方法です。

また、「主治医の意見書」に必要な情報が正しく記載されておらず、正確な判定結果に繋がらないケースもよくあります。かかりつけ医としっかりコミュニケーションをとっておくことが必要です。

大切なのは、どの程度介護を必要としているのかなど、具体的に伝えることが出来るように準備しておくこと。頻度や介護の内容など調査項目にない内容も伝えておくことで、特記事項に書いてもらえる可能性があります。

 

「想定よりも低い介護度の判定が出てしまう」というケースもあります。

認定調査の所要時間は30分〜1時間程度という短い時間で行われますが、この短時間で本人に関連する情報を全て伝えなければなりません。

実態に合った介護認定を出してもらえず再調査の依頼とならないように、現況を正確に伝え必要な情報を提供することで、スムーズに要介護認定を受けましょう。

要介護認定に納得がいかない場合はどうする?

認知症になった場合、基本的に要介護認定を受けられるケースが多いです。

しかし中には、認定された区分に納得がいかず、認定直後にやり直しを求める人もいます。

要介護認定をやり直す「審査請求」とは、行政不服審査法に定められた市民の権利であり、一度決定した要介護認定を取り消してもらうための申し立てです。

申請期限は、認定結果の通知を受けた翌日から3カ月以内。

審査請求すると「認定結果が妥当だったのかどうか」の審査が行われ、請求者の主張が認められた場合は市区町村の決定の全部、または一部が取り消され、要介護認定をやり直すことも。

注意点は下記の3点です。

  • 審査請求をしたからといって必ずしも希望が通るとは限らない
  • 取り消しの判定が出るまでに数ヶ月かかる
  • 取り消されたとしてもまた最初から介護申請をする手間が発生する

審査請求の他に、要介護認定の調査を再度行い介護認定審査会で判定してもらうのも1つの方法なので、「区分変更の申請」も併せて利用を検討すると良いでしょう。

本来、この変更手続きは認定の有効期間中に「本人の状態などに変化があった際」に行うのが原則です。しかし、実際に区分変更の申請は認定結果を不服と捉えている利用者にも用いられているので、利用を検討する価値はあるといえます。

「区分変更の申請」を行いたい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談した上で手続きを進めていきましょう。

本人が拒絶する場合はどうする?

認知症が疑われる場合は早期の診断を受けることが重要ですが、焦って強引に進めてしまうと家族関係の悪化につながります。

まずは家族間で話し合い、かかりつけ医や病院への受診へ誘うことが重要ですが、本人が拒絶するケースも少なくありません。

このようなケースに直面した場合は、地域包括ケアセンターで相談すると良いでしょう。本人が診察を嫌がっている場合でも、「認知症初期集中支援チーム」などの支援により要介護申請に至ることもあります。

家族からではなく、専門家からの提案であれば本人も心理的に受け入れやすい側面もあるので、話の切り出し方や本人の説得に困っている方の参考になるでしょう。 

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まとめ

単身の高齢者の中には、「もし自分が認知症になったら…」と不安を抱えながら暮らしている人も多いのではないでしょうか。

自分以外に要介護認定の申請ができる家族がいないなら、認知症になる前に任意後見制度の利用を考えてみるのも良いでしょう。

また、親や配偶者が認知症と診断されると、家族のほとんどはその先の介護について想像し、大きな不安を抱えることに。しかし、介護保険で受けられるサービスをうまく利用することで、認知症の人が自立した生活を続けることができたり、家族の介護負担を大きく減らすこともできるのです。

まずは、制度について理解し、医療機関のソーシャルワーカーや市区町村の担当窓口に相談してみましょう。

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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