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要介護1とは?認定基準、受けられるサービスや費用を解説

公園を話しながら歩く日本人の高齢者夫婦(シニア・男女) #介護の知識

要介護1とは?

シニア男性

要介護1とは、食事や排せつなど日常生活の基本的なことは一人でできますが、見守りや部分的に介護が必要な状態です。要介護1の認定基準や、具体的にどのような状態なのか見ていきましょう。

要介護1の認定基準

要介護1の認定基準は、要介護認定基準時間が「32分以上50分未満」であることとされています。要介護認定基準時間は、以下の5つの観点から、介護に必要な時間を示したものです。

  • 直接生活介助:入浴・排せつ・食事などの介護
  • 間接生活介助:洗濯・掃除などの家事援助等
  • BPSD(認知症に伴う行動心理症状)関連行為:徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
  • 機能訓練関連行為:歩行訓練・日常生活訓練などの機能訓練
  • 医療関連行為:輸液の管理、褥瘡(床ずれ)の処置等の診療の補助等

要介護認定基準時間は要介護認定時の判定基準の一つです。あくまでも介護の必要性を量る「ものさし」であり、直接、訪問介護・訪問看護等の在宅で受けられる介護サービスの合計時間と連動するわけではありません。

出典:厚生労働省「用語の説明」「要介護認定はどのように行われるか

要介護1の状態

要介護1は、食事や排せつなどの身の回りのことは基本的には自分で行えますが、日常生活の複雑な動作をすることが難しく、一定の認知能力や運動能力の低下が見られる段階とされています。

常時介護を必要とする状態ではありませんが、日常生活の一部で支え・介助が必要な段階です。具体的には、以下のような状態が挙げられます。

  • 立ち上がったり、立ったままの姿勢を保ったりするの介助が必要なことがある
  • 入浴する際に浴槽をまたぐのが難しい
  • 自分で服のボタンを外すのに時間がかかる
  • 理解力が低下し、ひとりでの買い物が難しくなる

要支援2と要介護2との違い

要介護1の前後の段階である要支援2と要介護2との違いは、大きく分けて「身体状態が安定しているかどうか」「認知症があるかどうか」の2つが基準となります。以下にその具体例をまとめました。

要支援2要介護1要介護2
食事自力でできるほぼ自力でできるが、部分的に助けが必要手助けが必要
入浴や排せつほぼ自力でできる部分的に手助けが必要手助けが必要
立ち上がりや歩行ほぼ自力でできる支えが必要な場合がある支えが必要
家事など身の回りのことほぼ自力でできるが、部分的に助けが必要部分的に手助けが必要全般的に見守りや手助けが必要

要介護1は、要支援2の時よりも一部手助けが必要となるケースが増えていきます。要介護2になると、ほぼ全ての行為において、手助けが必要になる状態となります。

 

要介護1で受けられるサービス

要介護1の方が利用できる介護保険サービスは以下となります。

自宅に訪問訪問介護(ホームヘルプ)

訪問入浴

訪問看護

訪問リハビリ

夜間対応型訪問介護

定期巡回・順次対応型訪問介護看護

施設に通う通所介護(デイサービス)

通所リハビリ

地域密着型通所介護

療養通所介護

認知症対応型通所介護

訪問・通い・宿泊を組み合わせる小規模多機能居宅介護

介護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

短期間の宿泊短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所療養介護

介護施設等で生活介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護老人保健施設(老健)

介護療養型医療施設

特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)

介護医療院

地域密着型サービス:地域に密着した小規模な施設等認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

地域密着型特定施設入居者生活介護

福祉用具を使う福祉用具貸与

特定福祉用具販売

出典:厚生労働省「公表されている介護サービスについて

要介護1の介護サービス利用の目安

要介護1に認定されると、担当のケアマネジャーに介護サービスを利用するためのケアプランを作成してもらう必要があります。ケアマネジャーは、利用者それぞれのケースに応じて必要なサービスを組み合わせ、適した利用回数を記載したケアプランを作成します。

厚生労働省の調査によると、要介護1の方が利用する介護サービスで最も多いのが通所系サービス、次に訪問サービスと公表されています。利用回数は利用者の状況により異なりますが、要介護1の場合以下が利用頻度の目安となっています。

通所介護(デイサービス)

利用頻度:週1〜3回

要介護1の方の中で、介護サービス利用割合が最も多い通所介護(デイサービス)。通所介護では、介護施設に日帰りで通い、食事や入浴などのサービスを受けることができます。職員は利用者の日常生活の世話や身体機能のトレーニングを行い、利用者ができるだけ自立した生活を送れるように支援します。

訪問サービス
利用頻度:週2〜3回
訪問介護は、自宅にホームヘルパーが訪れて食事や入浴の介助、家事や通院時の付き添いなどを行うサービスです。その他、要介護1で多く利用されるサービスには、専門職のリハビリが受けられる訪問リハビリや、医療ケアが必要な方には訪問看護のサービスなどがあります。

参考:厚生労働省「介護保険事業状況報告」、厚生労働省 国民生活基礎調査 令和元年国民生活基礎調査「介護を要する者数,現在の要介護度の状況・介護サービスの利用状況・利用した介護サービスの種類(複数回答)別

要介護1で利用できる福祉器具レンタル

要介護1の場合、介護保険を利用して借りることができる福祉用具は、以下の4つに限られます。

  • 歩行器
  • 歩行補助杖(松葉杖や多点杖など)
  • 手すり(工事を伴わないものに限る)
  • スロープ(工事を伴わないものに限る)

ただし、要介護1でも特に医学的に必要と認められる場合は、レンタル対象外の介護用品や福祉用具でも「例外給付」を受けることができます。そのために市区町村の手続きが必要ですので、該当する場合はケアマネジャーに相談しましょう。

 

要介護1のサービス利用限度額と給付金

介護を必要とする人々には、それぞれの要介護度に応じて「区分支給限度額」という介護保険から支給される上限額が設けられており、要介護度によってその金額が異なります。

支給限度額内のサービスであれば、利用者はその費用の1〜3割を負担することでサービスを利用することができ、例えば要介護1で自己負担1割の方の場合は、月額167,650円までのサービスを上限16,765円で利用することができる、ということになります。

なお、区分支給限度額を超えて利用した場合、介護度に限らず超過分は全額自己負担となります。

要介護1の区分支給限度基準額と自己負担額(月額)

要介護1
区分支給限度基準額167,650円
自己負担1割の場合16,765円
自己負担2割の場合33,530円
自己負担3割の場合50,295円

※1単位当たり10円として計算した場合

 

要介護1で一人暮らしはできる?

シニア男性

要介護1は、要介護のなかで最も症状が軽い状態であり、一人暮らしをすることは可能な段階です。

厚生労働省の調査からも、要介護1の方で一人暮らしをしている方は比較的多いことが分かります。

認知能力や運動能力の低下により、入浴やトイレ、買い物、掃除などで援助が必要なこともありますが、週に数回の訪問介護や通所介護(デイサービス)、自治体の高齢者向けサービスなどを利用すれば、要介護1は自立した生活が行えます。

しかし、認知症の進行具合によっては、外出中に道に迷ったり、金銭や薬の管理ができなかったりするなど、一人暮らしにはリスクが伴うこともあります。一人暮らしを続けるためには、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)などの援助や見守りを受けながら自分の日常生活を維持できることが安心材料と言えます。

要介護1で一人暮らしをしている人の割合

単独世帯 29.1%

夫婦のみの世帯 21.3%

その他の世帯 19.8%

三世代世帯 14.9%

ひとり親と未婚の子のみの世帯 7.1%

夫婦と未婚の子のみの世帯 7.8%

出典:厚生労働省 令和元年国民生活基礎調査「介護を要する者のいる世帯数,世帯構造・世帯主の年齢階級・現在の要介護度の状況別

要介護1での入居施設利用について

要介護1の状態で一人暮らしをすることは可能であると前述しましたが、介護施設入居を選択される方も少なくありません。要介護1の方の利用が多いのは、健康型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅です。

原則として要介護3以上の方を対象とした特別養護老人ホームや認知症の方を対象としたグループホーム、施設によっては同じ自治体の住民票を有していることが条件になっているなど、要介護1や条件次第では入居対象とならない施設もあるので、施設選びの際には注意が必要です。

とはいえ、介護度が比較的低い方が入居できる施設は、選択肢も豊富であるため、まずは施設情報を収集や見学を行うなどして、利用者に適した施設を検討してみてください。

要介護1の方が入居できる主な介護施設

  • 有料老人ホーム(健康型・住宅型、介護付き)
  • ケアハウス(軽費老人ホーム)
  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)
  • サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
  • 老健(介護老人保健施設)
  • 介護医療院

 

要介護1のケアプラン例と費用の目安

ケアプラン例

ここでは、要介護1の方のケアプラン例とかかる費用の目安を、ケース別にみていきましょう。

支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が同居しているかどうかで、必要とされる介護サービスの種類は異なります。

また、要介護1では、立ち上がりなどの動作を助けるための手すりのレンタルも考慮しておきましょう。

家族と住む場合

ご家族からの援助が可能なため、自宅でご家族が行うのが難しいとされるリハビリテーションの利用と週1回デイサービスを利用することを想定したケアプラン例です。

サービスの種類回数/月自己負担額(1割の場合)
訪問リハビリ4回(週1回)1,160円
通所介護(デイサービス)4回(週1回)2,580円
手すりのレンタル月額1,000円
合計4,740円

 

一人暮らしの場合

一人暮らしの場合、ご家族と同居している在宅介護と比べてサービスの利用頻度が高くなります。

生活支援を含む訪問介護サービスとデイサービスなどの通所介護サービスの利用が主軸となるケアプラン例です。

サービスの種類回数/月自己負担額(1割の場合)
訪問介護(生活援助)12回(週3回)2,196円
通所介護(デイサービス)8回(週2回)5,160円
T字杖のレンタル月額100円
合計7,456円

 

まとめ

要介護1は基本的な生活は自分で行えるため、常時介助が必要ではありませんが、部分的に日常生活の動作に支えが必要な状態です。

一人暮らしを続けることは可能ですが、認知症の症状がある場合は生活の安全面にリスクが伴うため、ご家族と同居するか施設に入居する検討を視野に入れておきましょう。

要介護1の認定を受けると、通所サービスや訪問サービス、福祉器具のレンタルなど、さまざまな介護保険サービスが利用できるようになります。担当ケアマネジャーに相談をして、利用者のニーズに適応した介護サービスを活用していきましょう。

 

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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