#介護事業所インタビュー

【特集】介護事業所インタビューvol4. あそび心株式会社編 ~「わがまま」を言い合える対等な関係性と、目の前の人を笑顔にするクリエイティブな介護とは~

デイサービスふくろう #介護事業所インタビュー

日本全国の介護事業者をピックアップ!今回は、兵庫県明石市において、居宅介護支援事業所やデイサービスふくろう、訪問介護ケアサービスを展開する、あそび心株式会社代表の吉川健太(よしかわけんた)さんにインタビューを行いました。

吉川健太(よしかわけんた)氏
あそび心株式会社、代表取締役社長

介護老人保健施設8年、特別養護老人ホーム2年、有料老人ホーム3年、サービス付き高齢者向け住宅4年と、介護業界における豊富な現場経験・管理職経験を経て独立。兵庫県明石市において、居宅介護支援ケアプランセンターあそび心、地域密着型通所介護デイサービスふくろう、訪問介護ケアサービスあそび心、居宅介護(障害)ケアサービスあそび心を経営する。趣味は裁縫で、ミシンで小物を作るのが楽しみ。

 

目の前の人を笑顔にする、クリエイティブな介護とは

編集部:吉川さん、お時間をいただきありがとうございます。早速ですがはじめに、御社の介護に対するこだわりを聞かせてください。

吉川氏:弊社の企業理念は「目の前の人を笑顔にする」です。ご利用者様はもちろんなのですが、ご利用者様のご家族もまた、弊社の企業理念のスコープに入っています。当然のことながら、弊社で働いていただける従業員の皆様とそのご家族もまた、少しでも笑顔で暮らせるように、可能な限り支援したいと考えています(インタビュー中も、常に背後で、職員やご利用者様の笑い声が聞こえていた)。

編集部:実際に後ろで笑い声が聞こえますね(笑)。御社の企業理念である「目の前の人を笑顔にする」ということ、具体化するための仕掛けを教えてもらえますか?

吉川氏:うるさくてすみません(笑)。まず、私個人が、よく笑います。それと弊社では、仕事の枠を超えて、誰とでも人間として、相手が受け入れてくれる範囲で、できる限り対等な関係を築きたいと思っています。誤解を恐れずに言えば、プロとしての線引きは必要でも、誰とでも友達として付き合っていけるような文化を作っています。味気ない、大量生産のような介護は、したくありません。介護はクリエイティブな仕事であるべきです。

 

友達のように対等な関係を築く文化

編集部:事例として、そうした文化を端的に表していることはありますか?

吉川氏:私、今度、ご利用者様(要介護5)と、利尻島までラーメンを食べに行きます。そのご利用者様は、そのあと、パラグライダーをやりたいそうです。それも、きっとご一緒するでしょう。

編集部:要介護5で!?お金も相当かかりますよね?

吉川氏:はい。ですが別に、このご利用者様から料金をもらうようなことはありません。まさに、友達と一緒に旅行をするのと同じ感覚です。私も、利尻島に行ってみたいから、一緒に行くだけのことです。いかにご利用者様の要望であっても、私が興味を持てなければ、ご一緒することはありません。そこも、友達と同じ感覚です。パラグライダーは、少し怖いですが、やってみたいです(笑)。

編集部:ほかにも、そうした事例は多数あるのですか?

吉川氏:社会的に孤立しがちなご利用者様のご自宅を伺って、すき焼きパーティーをしたりもしました。明石は、安くて美味しい居酒屋がたくさんあるので、ご利用者様と一緒に居酒屋に行くこともあります。あべのハルカス(大阪)も、ご利用者様と行きました。夏であれば、プールに一緒に行くこともあります。年末年始のお休みも、なるべく、独居の高齢者のところには顔を出すようにしています。

編集部:・・・全部、ボランティアで行なっているのですか?

吉川氏:ボランティアという言葉は、少し違うように思います。友達と飲みに行くことをボランティアとは言いませんよね?確かに、こうした活動は全て無償で行なっているので、客観的に見ればボランティアになるかもしれません。ですが私は、実感として、自分がボランティアをしているとは全く思っていないのです。

編集部:代表だけでなく、職員の方々も、そうした活動を行なっているのですか?

吉川氏:経営者として、そこはとても気をつけないとなりません。単純な無償の労働を、大切な職員に押し付けることは絶対にできませんし、したくありません。あくまでも職員が自発的にやりたい範囲で、無理をしないよう何度も確認をした上で、それでも、そうした活動に参加する職員もいます。ですが、基本的には、代表の私が好きでやっていることです。職員には「吉川さん、好き勝手もいいけど、ちゃんと仕事してよね!」と言われたりもします(笑)。

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「わがまま」を言い合える関係性こそが介護現場に求められている

編集部:どうして、そこまでするのでしょう?

吉川氏:昔、老人ホームで職員をしていた時、もう何年も湯船に入っていないというご利用者様がいました。私は、20年近い現場経験を持っていましたので、ならばと、そのご利用者様を湯船に入れる介護をしました。その結果、そのご利用者様は、私に対して色々な要望を「うるさい」と感じるくらいに投げかけてくるようになったのです。

それ以前は、喋ることも、動くことさえもほとんどなかったご利用者様が、いきいきと「わがまま」を言うようになりました。そうした「わがまま」に、時には「うるさいなぁ」と正直に拒否もしつつ、可能な範囲で応えていくことを通して、私の中で、何かが変わりました。

そうした「わがまま」を言い合えるような関係性、理想的には友達のような関係性こそ、自分が介護の現場に求めているのだと強く感じたのです。

編集部:「わがまま」を「あえて引き出す」のが代表にとっての理想の介護ということですね?

吉川氏:おっしゃる通りです。理解し難いかもしれませんが、私は、ご利用者様から「ありがとう」と言われるのが苦手です。人間は、いつも一方的に「ありがとう」と言わされている相手に対して、それ以上の「わがまま」は言いにくくなるからです。

「わがまま」が言いやすく、それが通ることもある(通らないこともある)状態があればこそ、ご利用者様は、自分の欲求に正直になりますし、やりたいこと、したいことを積極的に探すようにもなります。それが、ともすれば無気力にもなりかねないご利用者様を明るく、元気にさせます。その確信があります。

編集部:「わがまま」を言っていただくのは難しいことですか?

吉川氏:難しいです。ただ実際は、1つ目の「わがまま」が言えるようになると、2つ目以降は、どんどん出てくるようになります。ですから、1つ目の「わがまま」を言っていただくことが、最大にして最後のハードルでもあります。

ただどうしても、介護をされる側になると、自分の介護をしてくれる人々に対して「申し訳ない」という気持ちになるものです。その状態で「わがまま」を言うことは、特に昔の文化では、非常識とされてしまいます。ですが、友達になら、多少の「わがまま」は言えますよね。だからこそ、友達に近い関係性を目指すのです。

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認知症ケアにおいて心がけていること

編集部:認知症をお持ちのご利用者様でも「わがまま」が言えますか?

吉川氏:難易度は上がりますが、十分に可能です。全体で、弊社と契約しているご利用者様は100名前後です。そのうち、認知症の方は15%程度かと思います。まず、認知症をお持ちの方の場合、友達どころか、私の名前を覚えてもらうことさえ、困難なことが多いです。

それでも、名前は覚えてもらえなくても、相手に合わせて、少しずつ関係性を近づけていき「馴染みの人」にはなれます。それほど簡単ではありませんが、認知症をお持ちの方とも、居酒屋に行けたことも実際にあります。居酒屋で、笑顔で、いつもよりも、かなりたくさん飲み食いするご利用者様の姿は、今も忘れられません。

編集部:認知症ケアに対する代表の考えを、ぜひお聞かせください。

吉川氏:その人が過去に積み上げてきた日常生活に注目することだと思っています。日常生活とは、不満もあるでしょうが、その人なりに掴み取ってきた幸福の形です。それが壊れてしまうことは、誰にとっても苦痛であり、混乱の原因だと思うのです。

個々に全く異なるそれぞれの日常生活を、過去にまでさかのぼってできる限り理解し、小さなことでも勝手に「つまらないこと」と切り捨ててしまうことなく、大切にするような介護を心がけています。それが結果として、これまで続いてきた笑顔が、認知症になったとしても、続いていくことにつながるのです。

 

ご家族の「しんどい」に寄り添いコミットする組織でありたい

編集部:ご家族の支援について、意識していることがあれば教えてください。

吉川氏:多くのご家族にとって、介護は、馴染みのない、経験のあまりないこと(そもそも経験したくないこと)です。ですから、特に介護の始まりにおいては、できる限り介護全体を一緒に考え、少しでも負担の少ない介護になるように意識します。その上で、介護は少しずつ状況が変化していくものです。多くは、ご利用者様の健康状態の悪化によってのものですが、これまでと同じ介護では負担の解消ができなくなることも多いです。

そうした状況の変化においては、とにかくご家族にとって「何が一番しんどいのか」を意識して聞くようにしています。そうした「しんどいこと」を少しでも減らすための提案を、こちらから積極的に行うことで、ご家族の支援に対しても、組織レベルでコミットしています。

編集部:代表にとって自慢できることを、教えてください。

吉川氏:人に恵まれています。職員はもちろん、ご利用者様にもとても恵まれています。今度行くことになった利尻島も、正直、ご利用者様からの提案がなければ、一生行かなかったかもしれません。自分の人生が、周囲の人々の存在によって、楽しくて刺激的なものになっています。

あと、ここはどうしても強調しておきたいのですが、ご利用者様は、何も毎日、居酒屋に行ったり、あべのハルカスに行ったり、利尻島に行っているわけではありません。日々の現場は、あくまでも、多くの身体介護によってできており、日常生活の安定的な継続こそが重要です。

それら介護の現場を支えてくれているのは、全体の4割を占める介護現場歴10年以上のベテラン職員と、明るくも厳しい現場で日々研鑽を積んでいる若手の職員があればこそです。離職もほとんどありません。本当に、ありがたいことです。

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介護家族(ビジネスケアラー)へのメッセージ

編集部:最後に、事業者選びに悩んでいる方や介護に不安を抱えているご家族の方々へ、メッセージをお願いします。

吉川氏:つい先日、弊社のサービスをご利用いただいている102歳の女性が、生まれて初めて、マクドナルドのハンバーガーを食べました。とても美味しいと喜んでいただけただけでなく、私たちも、とても嬉しい気持ちになりました。介護とは、そういうことです。

心身に何らかの障害を負ってしまったとしても、その人に残されている力で、その人は笑顔になることができます。ともすれば、介護される人も、そのご家族も、負ってしまった障害にばかり注目しがちです。しかし介護のプロは、その人に残されている力に注目し、笑顔を生み出すためにこそ存在しています。

ご家族だけで悩むことなく、しんどい時は、介護のプロに対して「助けて」と言ってください。かなり厳しそうに感じられる場合でも、意外と、何とかなるものです。

 

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